RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

駆込み女と駆出し男@チネチッタ川崎 2015年5月23日(土)

封切り二週目に突入。

席数244と比較的大き目の【CINE 7】の入りは、
八割程度で盛況。

客層は中高年の夫婦連れが多し。


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原案が『井上ひさし』で
脚本・監督が『原田眞人』と来れば、
面白くない訳がないだろう。
予告編も、期待を持たせるのに
十分な造りであったし。


舞台は「縁切寺」の別名で知られる
鎌倉は「東慶寺」。
ここに複数の女達が夫との離縁を望んで駆け込み、
同時期に門前の御用宿に
宿主の甥で駆出し戯作者の『中村信次郎(大泉洋)』が
江戸から舞い戻ったことで起きる騒動の数々が描かれる。


際立つのは登場人物の科白の多さ。
特に『大泉洋』に言えることだが、
ととととと~ん、と流れる様に繰り出されるそれは
並大抵の量ではない。

それ以外でも、侠客のべらんめぇ口調、
他の人の口から流れる洒落た言い回し、
都々逸であったり、芝居の科白であったりと、
往時の庶民の見識の広さが溢れ出る。

一方、我々はと言えば、その類の世界には馴染みがとんと薄く、
ついて行くだけで精一杯、原作者が描きたかった世界の
半分も理解できたかどうか・・・・。


物語の時代は1840年代初頭。折りしも
天保の改革」が始まり、
庶民の娯楽には厳しい制限が掛けられ、戯作者達も
大勢が処罰される。

そういった時勢も巧く填め込んで、
当代の戯作者である『井上ひさし』は
笑えて・時には腹を立て・しんみりとさせ、
最後には快哉を叫ぶ、上質な一篇に仕立てている。


唯一の瑕疵は、登場人物が多く、
皆が夫々の背景を持っているため、
それらを全て描き切れなかったことか。

東慶寺」や当時の離縁の仕組みについては
口頭での説明になるのは仕方がないコトながら、
ある特定の幾人かの態度や変節が
その過去にあることは明らかなのに、
結果だけがぽ~んと提示されるため、
どうにも唐突さは否めない。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


ではあるけれど、それを補って余り有る
スピード感。
軽妙な文体をまんま再現した
監督の力量には唸ってしまった。