RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

龍三と七人の子分たち@109シネマズ川崎 2015年5月10日(日)

封切り三週目。
席数130の【シアター2】は満員の盛況。


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ほら、運動会の親子競技でよくあるじゃない、
本人は昔通りのつもりでも
手足がついていかないで怪我をしてしまう父兄。

本編の(一旦、引退し)再度復帰したヤクザ達も同様で、
気は若いんだけど肉体はダメダメで、
要は精神との乖離が老いの悲しさなんだけど、
忍び寄って来る死期も含めて
次々と繰り出される乾いた笑いで、それらを
ばーんと弾き飛ばしている。


直近の『北野』作品では、
元から有った「死」と「暴力」の影が
更に濃密さを増していた。
ところがどうだろう、
ここではモチーフは同様ながら、
その片鱗しか見せていない。

例えば、死体を弄ぶような拵えのシーンでは
不謹慎という言葉も聞こえて来そうだけど、
何のことはない、落語の「らくだ」でも語られるように、
可笑しさを醸すには絶好の手段だから。

場内はその度毎に、哄笑に満ち、
観客達はホントに楽しそう。


考えてみれば、『北野』監督も もう68歳だし、
主演級の二人は共に73歳。

煽りのインタビューなんかでは、
「撮影時には救急車を準備しておいて・・・・」なんて、
何時もの如く洒落のめしていたけれど、
ちょっと前と違ってイマドキの70代は
かなり若いハズ。

なのに本作では、そこいら辺を意図的にに曖昧にし、
刑事を演じる『ビートたけし』と
(元)ヤクザを演じる『藤竜也』や『近藤正臣』とは
随分と年の差があるような設定にしている。

裸になった『藤竜也』も、
年齢を考えればかなり立派な体躯だが、
先入観のせいだろう、相応にたるんで見えるのは不思議。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆。


荒唐無稽さの中に、現代的な犯罪のカタチと、
「俺達、古いのかな」といみじくも述懐する
昭和の残照が奇妙に同居し、得難い味わいの一作になった。