RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)@TOHOシネマズシャンテ 2015年4月14日(火)

封切り五日目。

席数224の【CHANTER-1】の入りは満席の盛況。


イメージ 1



極めて異色な作品。


場所はブロードウェー
嘗て特撮映画〔バードマン〕に主演し一世を風靡した
『リーガン・トムソン』がストレートプレイで復活を目論む。

しかしプレビューを前にして問題が山積み。
主演に加え、制作・脚本・演出も兼ねる主人公は
精神的に追い詰められて行く。


舞台となる劇場から
カメラはほぼ外に出ることがない。

出たとして近隣に在るバーとかその程度で
極めて狭い範囲内で物語りは進行する。

観客にも閉塞感が伝わる。
主人公と視線を共有するような造りは、
こちらの神経までひりひりとして来る。


オマケに極端な長回し
ほぼ切れ目無く展開されるシーンは
見る側にも緊張を強いる。

勿論、ドアの開閉のタイミングや
夜~朝に変わるシーンで繋ぎは行われてはいるのだが
(特に、カメラが夜空にパンし、
下りて来た時には朝になっているシーンでは
〔1900年〕を思い出して、はっとした)。


『リーガン』を演じるのは『マイケル・キートン』。
彼も同様に〔バットマン〕を演じていたことを考えれば
何とも皮肉が効いている。

しかし往時の面影は何処へやら。
さすがに同年代の男性に比べれば
立派な体躯ではあるものの随分と弛みが来ており、
その老醜に近いカラダを衆目の前に晒すのは
随分と勇気の要ったことだろう。


疲労の度が増して来た『リーガン』は
「バードマン」の幻影を見るようになる。
そして、その超人的な能力が
自分に憑依したと思い込む。

実際はそうでないことは映像で提示される。
しかし、観客の側にも現実とも
幻想ともつかない場面として提示され、
観ていても次第に、曖昧な境目に陥ってしまう。


所謂、内幕モノに分類されるのだろうが、
嘗て無かった表現は頗る斬新。

アカデミー賞」が飛びついたのも
必然のことに思える。

が、中途で席を立った客も、
一人や二人ではなく、
エンターテイメントの皮を被った硬質な作品であるから
拒絶するヒトも出ては来るだろう。


評価は☆五点満点で☆☆☆☆★。


本作は勿論のこと、
今年の「アカデミー賞」はホントに粒揃いだった。

ノミネートされた殆どの作品を観終えて思うことだが、
ほぼ外れがないもの。