RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

雨の中の慾情@109シネマズ川崎 2024年11月30日(土)

封切り二日目。

席数89の【シアター8】の入りは二割ほど。

 

 

つげ義春』の短編〔雨の中の慾情〕と、
それ以外の幾つもの作品を取り込んで一本の映画に仕立てている。

基本『義男(成田凌)』と『福子(中村映里子)』の物語りも、
そこに友人で作家志望の『伊守(森田剛)』と
松葉杖をつく大家の『尾弥次(竹中直人)』が絡む。


『義男』は夢から覚めると、
見た記憶を基に売れない漫画を描く。

『尾弥次』はそんな彼にトラック運転のアルバイトをさせ、
『福子』と出会ったのも、行った先の家でのこと。

『伊守』は『福子』と懇ろになるが、
商売に失敗し、彼女を捨て街を出て行ってしまう。

彼らが住むのは、検問所で南北に分断された国。
「南」は富む一方、「北」は貧民が住む。

『尾弥次』はそこで子供を集めて脅かし、脳髄を吸い取る怪しげな商売をしているが、
その関係で「南」とも行き来でき、
三人は『伊守』を探すため、「南」の地を訪れる。


と、ここまでは、寓話的ではあるものの一貫性のある流れ。
が、以降は語り口が激変する。

今と未来と過去、夢と現を垣根無く往還し、
何が現実で何が妄想なのかも判然としない。

原作を複数取り込んだことが要因ではなく、
入れ子構造を意図的に狙ったよう。


ある時には『義男』は『福子』と子供を持ち、
幸せな家庭を築いている。

が、庭で遊んでいるハズの子供を探して振り返れば、
そこに片腕を失くした軍人の姿を見る。

次の瞬間『義男』は、片腕・片足を失くし、
股間をも傷つけられた傷病兵として
病院のベットに横たわる。

舞台はどうやら、第二次大戦中の
中国東北部の戦場に転移したよう。

そこでは『伊守』は『義男』を気遣う戦友。
『福子』は慰安所で働いている。


こうした時空の激しい変転を受け入れられるかが、
本作の評価のキモだろう。

頭で理解しようとすれば追いつかず、
あくまでも監督の仕掛けた激流に身をまかせるのが吉のよう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


目覚めてのち描かれる漫画は複数あり、
冒頭エピソードの文法からすれば、
直前の挿話は全て夢の中の出来事となる。

いや、本当にそうだろうか?

『義男』の語る物語りとして観て来たものの、
最後の場面を観た後では、それすらも懐疑的になる。


監督の『片山慎三』のフィルモグラフィーを確認すれば、
助監督時代の作品を含め過半を観ている計算。

しかし本作、過去作のいずれとも異なる作風で
「R15+」のレイティングを纏い、
大林宣彦』があの世から舞い戻って来たのかと思った。