封切り三日目。
席数118の【シアター3】の入りは三割ほど。
wiki先生によれば
「贋作」とは
「作者の名を騙って流通させた作品」のことらしい。
では「模写」はどうか。
「他者の作品を忠実に再現、あるいは作風を写し取ることで、
作者の意図を体感・理解するための手段・方法」と書かれている。
加えて「模写には再現のための知識・技量が必要」とも。
回顧展の会場で、画家がふと目を留めた自身の過去作。
確かに描いた記憶はあるものの、
画面上の表現は明らかに自分の技量を超えている。
作者が「贋作」と断じたこの作品は
三億円を超える高値で取引され、
今は地方の美術館の目玉作品として収蔵されているもの。
専門家も真作と折り紙を付け、
鑑定書まで出されているのに、
何故このようなことに。
目の前に在るのが「贋作」なら「真作」はどこへ行ったのか。
もっとも本作の中では、その方向にミステリーは展開されない。
時を同じくして身体中に入れ墨を纏った女性の水死体が小樽で発見され、
以降、二つの事件は結びついて行く。
「贋作」と「刺青」に共通の人物が浮かび上がる。
彼は数十年前に、事件を起こして画壇から離れた人物。
その画家『津山竜次(本木雅弘)』の過去と今が
幾人かの口を借り語られる。
不幸な生い立ちと、画家の師匠との関係。
師匠の娘『安奈(小泉今日子)』は初恋の相手か。
彼女はたまさか、贋作を描かれた作家『田村(石坂浩二)』の妻となっている。
『本木雅弘』は圧巻。
狂気に憑かれたように
理想の美を追求する孤高の画家を演じる。
献身的に仕える『スイケン(中井貴一)』、
全身に刺青を彫って貰いたいと願う『アザミ(菅野恵)』も登場させ、
多くの人に慕われる人物像も描き出す。
しかし彼が描こうとしているのは常に、
自分を不幸に陥れた事件の記憶の再現。
悲しくも虚しくもあり、
それが完璧に体現された後には、
一体何が残るのか。
数十年ぶりに邂逅した『安奈』との関係は
さらりと語られる。
それなりに印象的なエピソードはあるものの、
今ではあくまでも精神的に繋がる者同士として。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
「贋作」の露見は自殺者を生み、
その遺書と、画家の遺した言葉には共通の真理が記される。
美の価値とは何か。
付けられた値段や、一部専門家のお墨付きがそうなのか。
観る者の心を揺さぶるのかどうかが基準ではないか。
「真作」よりも「贋作」の方がより心を打つのであれば、
果たして真贋だけが問題なのか、と。
直近で公開された〔まる〕とも相通じる主題。
今の風潮に、皮相な眼差しを向ける。