封切り二日目。
席数488の【CINE12】の入りは三割ほど。
それにしても『リドリー・スコット』という監督は
関連作品を作るのが本当に好きなのだなと思う。
一本には盛り込め切れなかった構想を、
全てアウトプットしたいとの強い欲求でもあるのだろうか。
〔エイリアン(1979年)〕
〔プロメテウス(2012年)〕
〔エイリアン: コヴェナント(2017年)〕
と並べた時に、前日譚の二作は
規模は大きくなっても、評価は下がるとの残念な結果に。
そして本作は〔グラディエーター(2000年)〕の続編(後日譚)。
同じ轍を踏むのではと、一抹の不安が胸をよぎる。
物語りの核となるのは、
同様に個人間の宿縁。
しかも、過去の時代を舞台に描くのにも
デビュー作の〔デュエリスト/決闘者(1977年)〕
近作の〔最後の決闘裁判(2021年)〕と
執拗な関心を示す。
今回はそれに「貴種流離」を絡める。
北アフリカのヌミディアで妻と平和に暮らしていた主人公が
ローマ軍の侵攻により、妻は殺され
自身は奴隷となったのちに剣闘士にされ、
しかし、妻を殺害した将軍に復讐するため爪を研ぐとの流れ。
その過程で『ルシアス(ポール・メスカル)』は幾つもの闘いを強いられる。
何れもが奇想としか言えぬシチュエーションだが、
主に(金に糸目をつけず実物大を造ったという)コロシアムでのそれは
とんでもないスペクタクル。
が、次第に、直接的な仇だけが問題なのではなく、
その後ろに巣食う存在が見えて来る。
帝国そのものを腐らそうとしている影が。
それにして、千年を超える古代ローマの歴史で
暴君を冠される皇帝の多いことに驚く
(勿論、名君も数多居るのだろうが)。
『ネロ』『カリギュラ』と並び『カラカラ』も腐敗した権力。
就任と時を同じくしての弟の殺害や
「アントニス勅令」の発布、
版図を拡大するためだけに繰り返す無謀な遠征も
悪評の背景だろう。
本作では、歴史的な事実や実際の人物は取り込みつつ、
史実とは異なる役割を与え
虚実をないまぜにしながら
絡み合った人間関係が生み出す影と光を外連味たっぷりに描く。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
とは言え根幹の部分に焼き直しとも取れる既視感はあるし
「貴種流離譚」と示されたところで
結末が想定できてしまうのは残念な部分。
ましてや、冒頭と最後のシークエンスを
同じ科白を使い、構成まで似せてしまうのは
やり過ぎの感もある。