封切り二日目。
席数284の【CINE5】の入りは二割ほど。
「情けは人の為ならず」の本来の意は、
「人に親切にすれば、それは巡り巡って自分に戻って来る」だが、
「人に親切にすると、その人の為にならないので、止めた方が良い」
の意と思っている人の存在を知ったのは、
自分が高校生の頃。かれこれ四十年以上も前になる。
直近の調査では、
後者が正しいと考えている人の割合が上回っているようで、
これも時代かなぁ、と
思ってみたり。
本作のタイトルは漢字では「相身互い」と書き、
「同じ境遇や身分の者は、
互いに同情し助け合うべき」が、その意のよう。
が、鑑賞後に感じたのは
「情けは人の為ならず」に近しい印象。
ウェディングプランナーの『梓(黒木華)』は
長い付き合いの『澄人(中村蒼)』から婚意を告げられているが
離婚した自分の両親の姿が記憶にあり、
なかなか一歩を踏み出せないでいる。
そんな折り、親友の『叶海(藤間爽子)』が突然の事故で亡くなる。
心の整理が付けられない『梓』は、
亡き友のLINEにメッセージを送り続ける。
『叶海』の両親も、娘を亡くした深い喪失感を抱えている。
そんな二人の元へは、思いもかけぬ場所からメッセージカードが届く。
脚本の練り込みが素晴らしい。
元々の原作は連作短編と聞く。
それも、三重県桑名市と、ごく狭い場所を舞台とする。
最初は、複数の人物の物語りが、
過去のエピソードを含め散文のように描かれる。
それが終章に向かい、どのように収斂するのか、
見当も付かない。
シャッフルされたジグソーパズルのピースのよう。
が、次第に納まる所に嵌り出すと、
全体像が薄っすら見え出す。
しかし、それでもまだ全容は見通せない。
叔母の紹介で、自分がプロデュースする金婚式のピアノ演奏を
『こみち(草笛光子)』に依頼しに行ったことが大きな曲折点。
その家はたまさか『叶海』との
中学時代の思い出の場所だった。
そこからストーリーは、大きな動きを見せる。
最後は、細かく張り巡らされた大小の伏線が全て回収され、
綺麗な円環が完成する。
これでもう終わりだろうと思ったところに
また新たなエピソードも披瀝され、
仕掛けの広がりに思わず仰け反る余禄まで付けて。
登場人物は皆々が良い人たち。
他人のことを慮り、それが回りまわって自分に返って来る。
まさに胸がすく思い。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
強烈な印象を残す描写は無く、
淡々とした語り口でも
十分に人を感動させるチカラがあるとの
見本のような一本。
撮影と編集にも抜群の力量を感じる。
わけても『叶海』の両親が或る施設を訪ねるシーンは
科白は無く、音楽と役者の演技だけで構成されているのに
胸アツになり感涙すること必至の場面。