封切りは8月17日も、ここに来て上映館が拡大の様子。
〔カメラをとめるな!(2017年)〕のように
極少の予算で数十億の興収の可能性も有りや無しや。
「チネチッタ」は先月末からの上映館で
且つ尺が136分の「デラックス版」とのこと。
やはり観るなら、ここでしょ。
席数284の【CINE5】の入りは六割ほど。
現代人が戦国時代にタイムスリップする作品は枚挙にいとまがない。
一例では(TVドラマだが)、
「NHK少年ドラマシリーズ」の〔夕ばえ作戦(1974年)〕。
『光瀬龍』の原作で、今は「笑点」で座布団運びをしている『山田隆夫』が主演。
「おもしろうてやがて悲しき」ストーリーが心に残っている。
対して、その逆は珍しいかも。
自分の記憶では〔ちょんまげぷりん(2010年)〕〔サムライせんせい(2018年)〕くらいか。
後者のTVドラマ版と、共に主役が『錦戸亮』なのは面白い。
わけても〔サムライせんせい〕は、幕末の志士が現代にタイムスリップし、
文明に戸惑いながらも人望を得ると言う・・・・。
時は幕末、所は京都。
長州藩士を討つ藩命を受けた
会津藩士『高坂新左衛門(山口馬木也)』は敵と切り結ぶさ中、
落雷を受け百四十年後の現代にタイムスリップ。
気が付いた場所が時代劇の撮影所だったのは幸運。
その場に居ても違和感のない装束。
風貌や所作、言葉遣いまでも、
(時代劇での)武士道を極めていると
好意的に受け止められる始末。
騒動を起こし混乱しながらも、周囲に助けられ
次第にこの世界で生きて行く決意をかためる。
のっけから「繰り返しのギャグ」がさく裂。
撮影のシステムを上手く活用しており、笑わせてくれる。
が、以降は、文明のギャップから生じる可笑しさは、
意外なほど出て来ない。
寧ろ現代人にとっては当たり前の、
白米のおむすびやショートケーキを食べる件は、
幕府が滅び日本が豊かな国になった
主人公のレゾンデートルを揺るがすエピソードが頻出。
周囲は皆々良い人ばかり。
主人公が異世代の人間であることなど
考えもしない。
また『新左衛門』もすんなりと
現代の流儀に馴染んでしまうのは、
いかにも日本人らしいというべきか。
終わり方は元の時代に戻るのか、
現代で生きて行くのかの二択。
さて、どうケリをつけるのかと注視すれば
中盤以降に思わぬ展開が待っている。
良く考えれば、これはアリな設定で、
何故にここまでで気づかなかったかと虚を突かれる思い。
ここから物語は一気にシリアス路線に舵を切る。
豊かになった日本を理解はするものの、
そのために犠牲になった過去の時代の同志たちを思えば、
やり場の無い思いが去来。
そうした憤懣を背景にした、鬼気迫る技斗のシーンの迫力たるや・・・・。
一切の外連味を排し、ただ互いの思いをぶつけ合う二人に、
決着も併せ目が離せない。
恨みや憎しみが何も生まないことも、
説教臭くなく、余韻を以って提示する。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
ラストのシーンも思わず哄笑が巻き起こる
心憎い流れ。
ただ、これも、考えてみれば
事前に仄めかされていたのだよなぁ、と。
エンドロールを見ていれば、
スタッフの各パートに同じ人名が何度も登場し
一人十幾つも役割で撮られていたのが良く判る。
が、そうした忙しなさと、
作品のクオリティには全くの相関は無し。
笑ってほろりとさせられる良作は、
多くの人の目に留まり、制作陣に相応のリターンがもたらされることを望む。