封切り三日目。
席数407の【CINE11】の入りは八割ほどと盛況。
国内でも最大規模のショッピングサイトから配達された荷物が爆発する事件が起きる。
爆発は他の場所でも連続し、日本中はパニックに陥る。
時はブラックフライデーの真っただ中で多くの物流が集中する時期。
爆発物はどのタイミングで仕掛けられたのか。
物流センターの中か、配送の途中か、それともそれ以外の手段か?
センター長に着任したばかりの『舟渡エレナ(満島ひかり)』は
チームマネジャーの『梨本孔(岡田将生』を右腕に、警察と時に協力、時に反発し、
事態に対処しながら真相を追う。
この脚本は良くできている。
WhoとWhyとHowが提示される純粋なミステリー。
更に、どのタイミングで爆発が起こるか、との
サスペンスの要素も盛り込む。
中盤ではレッド・ヘリングも提示され、鑑賞者のミスディレクションも抜かりなく誘う。
サイドストーリーも挟み込み、ラストシーンでは落ちに使う遊びも見せる。
一見、顧客第一主義にも見える社是は、
裏を返せば企業の最大利益追求のための方便との皮肉も利いている。
もっとも我々は、こうした言葉を日々、目にし、耳にしているわけだが。
とは言え、細部には粗も散見。
物流業界の2024年問題に関連する社会的にカレントな課題を提示する見識もあり。
ただ、「ラストワンマイル」で配送業者が疲弊する現状と、
数を盾に薄利で業務を委託するショッピングサイトの支配的なスタンスは
ややステレオタイプのきらい。
解決へ向けたちいさな一歩も、安直さを感じてしまう。
関連する主人公の言動にも首を傾げるところ。
ニューヨークの株式市場が開くまでの事件の解決は
緊張感を盛り上げる時間的要素として出色。
にもかかわらず、法人の収益を大幅に損ねる行為を平然とするのは
スタッフとしてはどうなのか。
一番の疑問は犯行動機(Why)の部分。
〔サイレント・トーキョー(2020年)〕でも感じたことだが、
自身にとっての大義のためなら、見ず知らずの他人の犠牲は意に介さぬ、
との結論に至る考えがどうにも理解不能。
同じように不幸な人間を生み出してしまう、或いは
事の成否が筋書き通りに進まぬ可能性を勘案した時に
ベストの選択肢なのか。
復讐は直截的行うのがベストと思えるが。
ましてや契機となった人間は依然として・・・・。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
「TBS」のテレビドラマ〔アンナチュラル〕〔MIU404〕と監督や脚本家は同一で、
世界設定を共有する「シェアード・ユニバース・ムービー」とされている。
ただ、前作を見ていなくても、問題なく楽しめる。
過去作の出演者は顔見世程度であり、ストーリーそのものには
何ら影響は及ぼさない。
まぁ、集客には寄与するかもしれぬが。
あざといマーケティング手法ではある。