封切り二日目。
席数191の【CINE10】の入りは
ほぼ満員の盛況。
「スタントマン」を題に取った映画は
なにもこれが初めてではない。
一例を挙げれば、そのタイトルもズバリ〔The Stunt Man(1980年)〕。
『ピーター・オトゥール』が映画監督を、
『スティーヴ・レイルズバック』が「スタントマン」を演じ、
男女の恋愛模様を絡め、撮影現場の内幕を見せ、加え
したたかな監督に翻弄される役者やスタッフ陣をコミカルに描きながら
アクションもたっぷりと堪能させる佳作。
受賞こそならなかったものの、
その年の「アカデミー賞」監督/脚本/主演男優賞にノミネートされた。
そして本作、
アクションと恋愛をより前面に出し、
スピード感満載でラストまで疾走する。
コメディの要素はより強く、洒落た会話も合わせ
思わず笑ってしまう場面は多々。
が、一貫して感じられるのは「スタント」に対する制作サイドの強い愛情。
四十数年前とは特撮/VFXの技術も格段に進歩し、
危険を冒さずとも作品としての完成度は高められるのに、
あえて生身の人間によるアクションにこだわる
(〔マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)〕と通底する意識を感じる)。
その背景には、
監督『デヴィッド・リーチ』が、
もともとスタントマン/スタントコーディネーターであったこと、
脚本の『ドリュー・ピアース』も多くのアクション作品に参加していることがあるよう。
彼らのフィルモグラフィーをひも解けば、
本編の隅々に過去作のコラージュやパスティーシュが偏在していることが分かる。
勿論、自身等の作品だけでなく、
多くの、とりわけロマンチックコメディの秀作も科白に上る。
実際の制作現場でも、こうした会話は恒常的に交わされているのだろうか、と
羨ましく観てしまう。
ストーリー自体は月並み。
スタントシーンの失敗に責任を感じ行方をくらましていた優秀なスタントマン
『コルト(ライアン・ゴズリング)』が、
元カノの映画監督『ジョディ(エミリー・ブラント)』の撮影現場に呼び戻されるが、
それとは別に失踪した主演俳優の居所を探る仕事を頼まれたことから、
トラブルに巻き込まれて行くとの筋立て。
『コルト』と『ジョディ』は再会の時から未練たらたらなのが見え見え。
どう考えても、二人はくっつく以外の流れは考えられない。
陰謀の背景はやや想定外ながら、仕掛けは穴だらけにも思える。
が、それを解決する手段として、
やはりスタントを使うアイディアは優れもの。
大笑いしながら、思わず手に汗を握ってしまう。
劇中、効果的に使われるスプリットスクリーンを
エンディングでも使用し、
一方ではスタント/アクションシーン撮影の裏側をたっぷり見せ、
もう一方でエンドロールを流すのだが、
これは少々困りもの。
内幕の方に興味が行き過ぎ、
クレジットを確認するのが、
ついおろそかになってしまう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。