RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

フェラーリ@チネチッタ川崎 2024年7月7日(日)

封切り三日目。

席数407の【CINE11】の入りは二割ほど。

 

 

妻と立ち上げた会社は倒産の危機に瀕している。
その妻とは愛息の死後に愛情は冷えきり、離婚の寸前。

一方、十年以上関係が続く愛人との間には男児ができ、
毎日のように顔を合わせている。

妻は男の甲斐性と、条件付きで浮気はしぶしぶ認めるものの、
子までなした愛人の存在には気づいていない。

男は社運を賭け、イタリア全土を縦断する公道レース
「ミッレミリア」に挑む。
優勝すれば、大量の注文が舞い込むとの強い信念のもと。


男の名前は『エンツォ・フェラーリアダム・ドライバー)』。
言わずと知れた「フェラーリ」の創業者にして
地元モデナはおろかイタリアの名士。

堂々たる体躯で、自身が元々レーシングドライバーだったこともあり
現役のドライバーに対しても一家言ある。


映画自体は『エンツォ』の伝記ドラマ。

力強いリーダーシップと信念で、
会社を浮沈の際から再び引き上げる。

時としてパパラッチもどきのマスコミを
巧みに利用することにも抜かりない。

もっとも、自動車の設計については異才も、
経営の手腕については疑問符が付く。
妻の『ラウラ(ペネロペ・クルス)』の方が
よほど権謀術数には秀でていたよう。


もう一つの見所は、勿論
レースのシーン。

いやそれは、愛人の家から早朝に
車を押しがけで(車の音で子供を起こさぬようとの気遣い)出す
冒頭のシークエンスから目を見張る。
滑らかなドライビングテクニックの鮮やかな描写。

一方でレースの場面になれば
荒々しい轟音が画面から流れ出し、
安全面での装備などはほぼ無いまま、
男たちは暴れ馬のような車を操る。

一たび事故が起きれば、それは死に直結。
自身だけでなく、観客をも巻き込む由々しき事態なる危険を
常に孕んでいる。

手持ちカメラを使っての映像は
殺伐とした空気をあますところなく伝える。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ただ強気なだけでなく、
運をも味方につけた男の成功譚。

とは言え
愛人『リナ(シェイリーン・ウッドリー)』との間にできた男児
『ピエロ』の認知にも思い悩む優柔不断さに、
「マッチョ」な姿は終焉したかにも見える。