封切り二日目。
席数456の【SCREEN1】の入りは三割ほど。
アメリカでのスポーツビジネスの規模の大きさを
改めて思い知らされる。
有望な選手には若い頃からエージェントが付き、
スポーツチームやギアを提供する企業との交渉代理を行い
その上前を撥ねる。
勿論それは、スポーツがワールドワイドで流通するコンテンツで、
スタープレイヤーともなれば
巨額のマネーを生むことが前提でもある。
本作は「ナイキ」を更に超一流の企業にのし上げた、
バスケットシューズ「エア・ジョーダン」開発の裏話と、
もう一つ、スポーツ選手とのスポンサード契約に新たな手法
-選手の名前を冠したギアを発売し、
それが売れた数によりマージンを上乗せする-との
ビジネスモデル誕生の発端。
もっとも後者に関しては、
選手側には福音であるものの、
(いみじくも劇中ふれられているように)企業にとっては
痛し痒しの契約内容には違いない。
舞台は1984年のアメリカ。
当時のスター選手の名前が、NBAに限らずごまんと上げられるので、
多少なりとも知識のある人間なら「そうそう」と
頷きながら観ること請け合い。
自分であれば「シンシナティ・ベンガルズ」の『ブーマー・アサイアソン』か。
ただ、彼が「スーパーボウル」に出るのは1989年のことだが。
往時の風俗の再現も見事ながら
それ以上にゴキゲンなのが、使われている楽曲の数々。
冒頭のシークエンスにも登場する
〔ビバリーヒルズ・コップ〕の〔アクセル・F〕、
『シンディ・ローパー』の〔タイム・アフター・タイム〕。
どれも、場面場面の効果的なBGMとして機能し、
制作サイドの慧眼に改めて感心。
とりわけ『ブルース・スプリングスティーン』の
〔ボーン・イン・ザ・U.S.A.〕は象徴的で
話中の登場人物に「ベトナム帰還兵の苦悩を題材にしたもの」と言わせているにもかかわらず、
アメリカンドリームの成功の証しとして
臆面も無く使ってしまうところが凄い。
本作を観ながら、先行して制作された一本の作品を想起した。
それは監督『ベネット・ミラー』、
主演『ブラッド・ピット』による〔マネーボール(2011年)〕。
「セイバーメトリクス」を用いた選手のスカウトや起用で
球団の危機を脱した一連の物語り。
主人公のスカウトマン『ビリー・ビーン』は
スタッフの『ピーター・ブランド』を片腕に、
今迄に無かった概念を球界に持ち込み
「オークランド・アスレチックス」の経営改革に成功、
時代の寵児となり今では上級副社長は
極めて近似のサクセスストリー。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
とは言え、そうした類の「モデル」には
光もあれば影もある。
先に挙げた企業の負担増もその一つ。
また、特許の及ばぬ手法は模倣することは容易い。
事実「アスレチックス」も
2014年~19年は地区優勝から遠ざかっている。
「ナイキ」はどうか?