封切り三日目。
席数244の【CINE7】の入りは七割ほど。
『リューベン・オストルンド』監督の前々作、
〔フレンチアルプスで起きたこと(2014年)〕は
何とも皮肉な映画だった。
フレンチアルプスの高級リゾートで
スキーを楽しむ若い夫婦と幼い子供達。
ところが人工的に起こされた雪崩が
計算を誤りレストランのデッキ迄流れ込んで来る。
パニックになった夫は、妻と子を置き去りにし、
自分だけが逃げ出す。
結果、誰も怪我をせずに済むのだが
夫婦の間には気まずい空気が漂う。
また、自分が我先に逃げたことを友人たちにも認めない夫の態度に
妻は不信感をつのらせる。
観ていても気まずく、不愉快になる一方、
男は常にマッチョで家族を守るものとのテーゼにも
疑いを持つのも確か。
本作は先の作品とも、かなり近似のテイストを感じるのだ。
物語りは、三つのパートで構成。
先ずはレストランで
若い男女のモデルが食事の支払いを巡って言い争いに。
男性モデルの収入は、女性のそれに比べ1/3程度しかないとの知識が観客に与えられ、
且つ、今回は女性が言い出した食事であることにも触れられる。
それでも払いは男性がするの?との
世間的な通年への疑念。
二つ目のパートは豪華客船の中。
乗船しているのは、クルージングを楽しむ
世界の富豪たち。
そこには先のモデルのカップルも乗船しており、
なんとなれば彼女のインフルエンサーとしての影響力を期待しての
試乗との役どころ。
しかし、乗り込んでいるセレブの面々は、
装いこそ煌びやかであるものの何処かいかがわしい。
武器の製造で財を成した者、或いは
「オリガルヒ」とも思えるロシア人。
またクルーたちも、乗客達からの多額のチップが目当てで
多少の我儘には目を瞑る所存。
資本主義の原理原則とは言え、
親の資産や真っ当でない金の出所に辟易をしてしまう。
そして最後のパートは無人島(?)。
豪華客船は海賊に襲われ沈没。
乗客と乗員の数人が流れ着く。
そこでは、社会的地位や金は何の役にも立たず、
サバイバル技術だけが全て。
実権を握ったのは、
清掃人チーフの中年女性との何とも皮肉な流れ。
社会的な通念はとことんコケにされ、
立場の逆転は環境次第で容易く起きてしまうとの寓意。
それがブラックな味付けで描かれ、
時として嫌悪感さえも覚える。
一方で若さや美への憧憬があるのは
何とも皮肉。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
大揺れする船中での食事をした結果
吐瀉物まみれになるシークエンスは
長々と執拗。
富裕層を貶める描写は他にもあったのでは、と
かなり眉を顰める場面ではある。
直近の〔バビロン〕もそうだったが、
金持ちを描く際に、似た表現になってしまうのは何故に?