RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

映画「イチケイのカラス」@TOHOシネマズ川崎 2023年1月13日(土)

封切り二日目。

席数158の【SCREEN3】の入りは七割ほど。

 

 

ドラマ版は未見。
しかし、通して見た人からは
「随分と面白かった。映画化の企画は納得」との反応。

ならば、と
足を向けた訳だが・・・・。


冒頭からテンポよく、
今回の主人公である『坂間千鶴(黒木華)』が躍動。

本来的にはその役ではないけれど、
本作に限っては、そう見た方が収まりも良い。

まさに彼女の魅力を最大限引き出すことに成功した一本で、
直情で正義感が溢れ、
ボケもかましつつ、時には悩み、しかし
常に依頼人の側に立つ(ここでは)弁護士を凛々しく好演。


ほんの短い時間で、主要な登場人物の人となりや境遇を
映像の構成で手際よく説明し、
それが自分のようなシリーズ初心者でも
すんなりと頭に入って来る組み立ては
『浜田秀哉』脚本の手柄で
彼は〔シン・ゴジラ(2016年)〕の企画協力もしてるのね。

だから『庵野秀明』が「友情出演」しているのだと納得。


物語りは貨物船がイージス護衛艦に衝突し
沈没することから動き出す。

この場面の特撮はかなりチープで、かつ
観客に提示される「レッドヘリング」もこれ見よがし。

誰もこんなことを真相だと思わないよ、と
半ば呆れつつ流れを見守ると
その事件に端を発した裁判が始まる。

国家ぐるみの隠ぺいが疑われる事件にかかわるのは
シリーズ全体の主人公である裁判官の『入間みちお(竹野内豊)』。


そうこうしている内に、もう一つの訴訟が。

『坂間』がかかわるそれは
ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(2019年)〕とほぼ同内容。
企業による環境汚染はしかし、
〔MINAMATA-ミナマタ-(2020年)〕でも描かれたように
企業城下町では一筋縄では行かず、
彼女は苦戦を強いられ。

そこに人権派の弁護士『月本(斎藤工)』が現れ
二つの裁判は絡み合っていくのだが、
そのシンクロのさせ方がなかなかに巧み。

一見、関連無さそうな独立事象が、
街の暗部を共通項に、重なり合う姿が次第に浮き上がる。

もっとも、『入間』は勘が良すぎるし、
事件の契機になる出来事も
それほどの短時間で影響が広がるのか、との
疑念は湧きまくる。


裁判は大団円を見はするものの、
其処からの派生はあまりに苦い。

企業が起こした公害がもたらす
分断の帰結でもあるのだが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


とは言え、
裁判そのものの役割は何か
裁判官の「他職経験制度」は何の為にあるのか
裁判員制度は何故導入されたのか
に、改めて思いを向ける契機にもなる一本。

ここで描かれるような有意な人々が多く存在する法曹界ならば、
裁判の姿は、かなり違ったものになるのでは、と
感じさせる。