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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ドリーム・ホース@チネチッタ川崎 2023年1月9日(月)

封切り四日目。

席数154の【CINE9】の入りは五割ほど。

 

 

実在の競走馬「ドリーム・アライアンス」
を題材にした物語りとのことだが、
過去にもこのカテゴリーには感動作が多い。

競走馬を扱ったものなら
見た目が悪く生まれたにもかかわらず
引退後は種牡馬にまでなった〔シービスケット(2003年)〕、
または三冠馬の活躍を描いた〔セクレタリアト 奇跡のサラブレッド(2011年)〕。

騎手であれば
オーストラリアで女性騎手初の栄冠を手にした
『ミシェル・ペイン』の〔ライド・ライク・ア・ガール(2019年)〕と
枚挙にいとまなし。

が、本作、同系列に位置付けされるも、
馬そのものや騎手に焦点を中てた作品とはやや文脈を異にし、
主役となるのは「ドリーム・アライアンス」の共同馬主の人々。

当然、レースのシーンの迫力は満点、
勝敗に一喜一憂も、それ以上に
関係した多数の人々にスポットライトを当てた、人間ドラマが面白い。


ウェールズに住む『ジャン(トニ・コレット)』は五十歳を目前にし、
やるせない思いに囚われていた。

子供は既に独立も、夫は仕事もせずに無為に毎日を過ごし、
両親の健康は衰え、折にふれ面倒を見に行く日課

自身も昼はスーパーのレジ、
夜はパブのバーテンをこなし糊口を凌ぎながらも
主婦としての変わらぬ暮らし。


そんな彼女が或る日、競走馬を育てレースに出し
賞金を稼ぐとのアイディアを思い付く。

やや唐突にも思えるが、
嘗ては犬の品評会や鳩レースで優勝との経歴、
且つ自宅には家畜もおり、
町中にも馬がうろついているとの環境も影響しているよう。

パブの客である『ハワード(ダミアン・ルイス)』の協力でノウハウを得、
更には町の人々に声掛けをし
少額出資の組合方式で資金面も乗り越える。

牡馬を買い入れ、安い費用で種付けをし、
生まれた仔馬を「ドリーム・アライアンス」と名付け育て上げ、
調教師に預け、レースに出るようになって以降は
結果も残しだす。


ここで変化したのは、『ジャン』とその夫、
または『ハワード』を含めて共同馬主の人々。

閉鎖的な片田舎で灰色の日々を過ごしていたのが
一頭の馬の活躍によりにわかに輝かしい毎日に変異する。

レースがある暇日は勿論、バスを仕立てて応援に。
その道中も馬主席でも宴会状態。

着内に入ったといっては喜び、優勝すれば歓声を上げ、
馬の存在が生き甲斐ともなって行く。


鄙びた町の他の住人達とて例外ではない。
おらが町の生んだスターの行く末を、
住民こぞって手に汗握り固唾を飲む。

勿論、馬主間で意見の隔たりも出よう。
が、その時は、馬を第一に考えることが、更なる幸運を招き入れる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


エンドロールの前に、同馬の引退後、
最終的に馬主達への分配金が提示され、
それは思いの外、少額。

まぁ、二十人もの人間に配分し、
更には元々掛かった経費を差し引けば、
その程度のものなのだろう。

とは言え、彼女や彼等が「ドリーム・アライアンス」と関わった間に得たのは
まさしくプライスレス。

どれだけの素晴らしさであったかは、
その後に『ジャン』がしたことを見ても判ろうと言うもの。