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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート@109シネマズ川崎 2022年2月13日(日)

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一日一回のみ上映で、しかも僅か五日間の会期。
加えて「IMAX」限定とのことで、
期間的にも金額的にもハードルが高い。

どれほどの好事家が来るのかと訝っていたら、
席数458の【シアター7】はほぼほぼ満員。

客層も、自分の年齢以上の
お爺さん・お婆さんがメインと思っていたら、
豈図らんや若人の姿もかなりの比率で見受けられる。

悉く、事前の予想を裏切ってくれる。


映画の〔Let It Be〕は、学生時代に「文芸座」で二回観ている。

何れも”音楽/ミュージカル映画特集”の時だが、
その時に受けたのは、『ポール』による『ポール』の為の映画との印象。

『ジョン』は『ヨーコ』とべったりで、
随分と冷ややかな態度。

中立的にも見える『ジョージ』『リンゴ』とも
見えない壁が存在するよう。

スタジオで切々と歌う〔Let It Be〕、屋上で叫ぶように歌う〔Get Back〕と
最早戻らない関係性を何とか復活させたいとの心の哀切な声に聞こえ、
観ていて切なくなるほどだった。


しかし今回公開された本作では、まるっきり違った側面が垣間見える。

元々、屋上での演奏は短い時間のもの。
それを補う為か、はたまた尺を稼ぐためか、
The Beatles』の略歴めいたものが冒頭流され、
その後、待望の映像となる。

演奏されるのは僅か5曲、
〔Get Back〕(3回)
〔Don't Let Me Down〕(2回)
〔I've Got a Feeling〕(2回)
〔One After 909〕
〔Dig a Pony〕
ボーナストラックの様に、ギター演奏だけの
〔God Save the Queen〕も挿入される。


合間合間には演奏に気付き立ち止まった人々のインタビュー、
或いは演奏を制止しようと事務所に入って来た警官の姿も。

特に後者の映像は衝撃で、
〔Let It Be〕では彼等の介入により
ライブが中途で終わったように見えるのだが、
今回の映像では、予定の演奏を全て撮り切った上での終了だったことが判る。


ただそれ以上に驚愕なのは、
先の映画では冷え冷えとして見えた四人の関係性が
まるっきり違うものに感じられること。

屋上とは言え、久々の人前でのパフォーマンスに
はやる気持ちを抑えられず、かじかむ指をものともせず
嬉々として楽器を鳴らし、歌をコーラスを付けて行く。

時としてアイコンタクトをし、時として微笑み合い、
永遠のロック小僧の面目躍如のパフォーマンスだ。

寒そうな映像とは裏腹、
観ている側の心はほわっと暖かくなる。


演奏を終えスタジオに戻り
録れ高を確認する作業の中途では
『リンダ』や『モーリン』の懐かしい顔も。
それも和気藹々とし、じゃれ合いながら。

今まで自分達が見て来たものは、一側面でしかなく、
彼等には四人にしか判らない、音楽を通じた絆が厳然と存在したことが了解される。


エンドロールも勿論見逃すわけにはいかない。

記憶にある名前や、思いがけない名前のクレジットが
次々と流れて行く。


そして終映。

期せずして、場内に拍手が巻き起こる。

プレミア上映でもないのに、
これは頗る珍しいことだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。