封切り二日目。
席数244の【CINE6】の入りは三割ほど。
例によって実録もの。
主演の『マーク・ラファロ』は製作にも名を連ね、
元々環境問題に関心の有った彼が
「ニューヨーク・タイムズ」の記事を読み映画化を熱望、
自ら『トッド・ヘインズ』に監督を依頼しただけあって
ほとばしる思いがたぎる作品に仕上がっている。
加えて、幾つかの点で特徴的な一本。
物語は時系列に沿って展開する。
ただでさえややこしい米国の司法制度で混乱しがちな頭を、
余分な流れの整理に回さなくて良いのは助かる。
もっとも終盤には、
冒頭の1975年の無軌道な若者が繰り広げる何気ない場面を筆頭に
伏線とも思えぬ箇所も全て関連付けられ綺麗に紐づく。
無駄なパートが一つも無く、
蜘蛛の糸の様に綿密に張り巡らされた語り口。
エンドロールの直前には
実在の登場人物達が自身の役、またはカメオ出演していたことが明かされ、
中には相当に驚く配役も含まれており。
2005年に和解が成立したばかりのほやほやの案件。
しかし、和解と解決が別モノなのは
他の公害事件を見ても明らかで
被害者の苦しみは金では解決できず、その後も続く。
主要なターゲットである「デュポン」社を
かなりの悪役に描いているのにも目をみはる。
テフロンの製造過程で使用する
発癌の可能性が高い化学物質を
それと知りながら放出させ、汚染を引き起こした事実は間違いがないようだが。
改めて数奇な運命と思う。
自身は企業法務専門の弁護士事務所のパートナーであっても、
出身の大学が有名どころでないため、
同僚や後輩からは偏見の目で見られる。
そんな彼が高卒の農場主の訴えに真剣に取り組み、
守る側から攻める側に転身、
大企業の不正を暴き国内はおろか世界中に波及するムーブを起こす。
観客はその蛮勇とも思える志に、
無条件の喝采を贈る。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
キリスト教圏でのオハナシだけあって、
随所に祈りのシーンが挿入。
中には教会での場面がありも、
訴えを起こした人々に対してのバッシングは
そのような席でも容赦ない。
信仰の如何にかかわらず、
都合の悪い者や理解できない者を弾こうとする斥力は
洋の東西を問わず共通らしい。