RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

あのこは貴族@109シネマズ川崎  2021年2月27日(土)

封切り二日目。

席数172の【シアター4】の入りは二割ほど。

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サラリーマンの子供も、農家の子供も、商家の子供も、
医者の子供も、いっしょくたになって学んでいた田舎の小・中・高では
気付かなかった事実。

勿論、「あいつの家は金持ちだから」程度の違いはあったけど、
それが交友関係に激しく入り込むことは無かった。


ところが大学進学で東京に出て来ると
新たな現実に直面。

それが「内進生」「外部生」の別で、
規模の小さい学校ほど、その差は歴然。

大学よりも高校から、中学から、小学から、幼稚舎から、と
どの時点で入学したかにより、属するコミュニティも異なれば
勿論ステイタスだって。


就職を機に更に異なる事態を目の当たりに。

所謂「一族」とか「直系」と呼称される人々の存在。
明治期の「公・侯・伯・子・男」や旧財閥に連なる人々。

纏っている雰囲気が異なるとは当然ながら
『小野谷敦』が〔日本の有名一族〕で、
広瀬隆』が〔日本近現代史入門 黒い人脈と金脈〕
で語ったような世界に住む彼等・彼女等は一方で、
一族のしきたりからスピンアウトしようとすると
強いチカラで押し戻され、結局は敷かれたレールの上を走るとの
不自由さもあることは見聞している事実。


本作は五章立てとなっており、
第一章は一方の主人公でありアッパークラスに属する
『榛原華子(門脇麦)』が婚活に奮闘する物語り。

ここでの描写は『小津』のそれを想起させるものがあり、
ややのやっかみと笑いを交えながら描写はテンポも良い。

松濤に住む医者の息女との設定は、
言葉遣いは当然、所作、特に食事シーンでの箸の持ち方まで
きっちり揃えられており、多少カリカチュアライズされながらも
細かい演出は、制作サイドの神経の行き届いたスタンスを目の当たりに。


二章以降ではもう一方の主人公『時岡美紀(水原希子)』が登場。
富山の漁師の娘との設定は、我々のサイドの右代表(笑)。

彼女のキャンパスライフは、もう何十年も前に経験した あるある を
ほろ苦い記憶と共に思い出させる。

もっとも学費や生活費の心配をせずに、
アルバイトもしながらそれなりの暮らしをしていた身からすると
かなりの違いはあるけれど。


そんな本来なら関わることのない二人の人生が
『青木幸一郎(高良健吾)』との触媒で交差した時に物語が動き出す。

しかしそれは、ありきたりの三角関係のどろどろを予想していると、
ちょっと違った流れに。

社会に隠然とある階級の差を軸に置きつつ、
一女性が殻を破り自分探しを結実させるまでを
軽微なドラマを交えながら、すきっと描き出す。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


とは言え、直近観た邦画で何となく感じられる もやもや が、
ここでも存在。

テーマが絞り切れてないというか、語り口がぼやっとしているというか。

たまたまなのかそれとも時節の傾向なのかは判らんが、
ややのフラストレーションが溜まる。