RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

大コメ騒動@TOHOシネマズ川崎  2021年1月9日(土)

封切り二日目。

席数142の【SCREEN1】の入りは六割ほど。

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もう随分と昔のことだが、大学受験の選択科目が日本史だったこともあり
米騒動」は今でも記憶に残っている歴史的な出来事の一つ。

当時の教師からは、「歴史は流れだから、事件単体で覚えても意味がない。
必ず前後に、起きた原因と影響があるはず」と、
口酸っぱく言われた記憶。

米騒動」なら、第一次大戦後の景気の波や「シベリア出兵」がそれに当たり、
本編でも特に後者は何度か言及される。

ちなみに『大和和紀』による〔はいからさんが通る〕も
同時代が舞台なのよね。


おっと閑話休題

本作は、所謂ご当地映画にカテゴライズされようか。

監督を始め、
室井滋』『西村まさ彦』『柴田理恵』『立川志の輔』等の
富山県出身者が大挙登場、物語に花を添えている。
中にはカメオ出演程度の人もいるけれど。

また話中で良心を体現する存在として登場する
薬種問屋の娘『雪(工藤遥)』だが
その店の暖簾には「池田模範堂(富山に在る「ムヒ」の販売社)」の名前が染め抜かれ、
楽屋落ちの仕掛けも散在しており。


物語り自体は、日々値上がりを続ける米の値段に悲鳴を上げた女性達が
県外(「旅」と表現)への移送を阻んだり、窮状を訴えたことで
暴騰した米価を下げて販売させることに成功した事の顛末。

なまじ学があるばかりに、良い意味でも悪い意味でも色眼鏡で見られてしまう
漁師の女房『いと(井上真央)』を主軸に据え、
敵対する官憲の財との癒着や横暴、
少なからず払ってしまった犠牲による義憤もきちっと盛り込み、
一方で仲間内での諍いも描きながら大団円へと纏め切る。

荷駄の賃金と、一日に必要な米の量、そしてその価格の変動も
分かり易く説明、彼女等の怒りの源泉が那辺にあるのかも理解できる丁寧な作り。

流石、職人『本木克英』と感心する。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


「騒動」と表記はされていても、郷土にとっては正の歴史であり、
女性が世の中を変えたメルクマーク的出来事なのだろう。

それを殊更に誇りつのるではなく、虚実をないまぜにしながら
抑え込んだ表現にしたのは好ましいのだが。

全体として見た時に物語り世界に入り込める仕掛けが
もう一つ欲しかったとの恨みもあり。