RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

燃ゆる女の肖像@チネチッタ川崎  2020年12月5日(土)

封切り二日目。

席数284の【CINE5】の入りは二割ほど。

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シノプシスをざっと読んだだけでスクリーンに向かい
冒頭のシークエンスから戸惑ってしまう。

婚約者に対して肖像画を贈るなんて、
『ベラスケス』の『マルガリータ』を思い出す。

でも『ヴィヴァルディ』の〔四季〕も劇中で演奏されているから
1700年代後半の設定か。

写真はまだ無い時代。
そしてフランスでの女性画家の地位もまだ高くはない時代。


本土から離れた島の屋敷に住む母と娘『エロイーズ(アデル・エネル)』。

母はミラノ在住の婚約者へ娘の肖像画を贈るため、
女性画家『マリアンヌ(ノエミ・メルラン)』を呼び寄せる。

実際は嫁ぐのは姉だったのだが、結婚を嫌い自殺、
身替わりとして妹が修道院から呼び戻された事の次第。

しかし妹の方も結婚に乗り気ではなく、
先に呼ばれた男性の画家には顔を見せずに絵は完成せず終い。

そこで母親は一計を案じ『マリアンヌ』の身分を明かさずに
『エロイーズ』に近づける。


ここまでが導入部。

このまま絵の完成に纏わるサスペンスが続くのかと注視していると
物語りは思わぬ方向に展開する。

主要な登場人物は屋敷の小間使い『ソフィー』を含めた僅か四人で
何れも女性。

会話も過少、BGMもなく、
風と波の音が支配する陰影のある空間で
『マリアンヌ』と『エロイーズ』の魂が交錯する。


中途、日本では『イザナギ』『イザナミ』に見られ、
海外では『オルフェウス』で知られている愛のカタチが俎上に乗る。
何度聞いても切なくなってしまうエピソードが
その後の展開に効いて来る。

動きも少ない中で、二人の見せる表情は雄弁。
そしてなによりも、もう一つの主人公である「絵」が
互いの関係性の変化を如実に物語る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


画家とモデルの立場が、実は一方的に観察する側される側でないことに
改めて気づかされる。

描かれる方も、描く方を真摯に見つめているとの入れ子構造に
改めて気づかされる。