封切り二日目。
席数246の【シアター1】の入りは八割ほど。
話題の大作、公開最初の週末、加えて「ポイント会員感謝の日」、
三拍子揃っているのにこの状況は正直意外。
信者も多いが嫌う人も多い『クリストファー・ノーラン』。
特に最近は判り難い作品が多いから、
要は観る層を選ぶということか。
『クリストファー・ノーラン』は
初期の〔メメント〕や〔インソムニア〕が
とりわけ好きな作品。
分かり易いことも理由の一つ。
ただ前者は、時間を逆行させての表現となっており、
当作の萌芽が、最早この頃から見られるかも。
それが〔インセプション〕あたりから少々怪しくなって来る。
舞台の重層化は監督本人は了解も
細部では綻びが出て収拾がつかないのでは。
時間の概念を扱った〔インターステラー〕は
よほど理解が容易だったけど。
で、本作。その二つのハイブリッドと受け取る。
タイムパラドクスは激しいし、
二時間半の長尺なのに説明がかなり端折られているので
製作者の中では整合性が取れていても
傍目からは破綻に近い所感。
が、そういったこ難しい理屈は脇に置き、
この長さを一気に魅せ切ってしまう剛腕さは相も変わらず健在。
特にCGをできるだけ使わずに実写にこだわった点がその最たるもの。
中でもジェット機が突っ込むシーンでは、
中古の実機を用意し、突入させたと漏れ聞こえる。
「その方が安上がりだから」が本人の弁らしいけど、
いやいや実際は「やってみたかった」が本心ではないかと。
要は子供のような心持なのだろう。
戦闘のモブシーンでもそれは同様。デジタル撮影をし逆廻しをすれば簡単なのに、
わざわざ役者達に逆の動きをさせている。
これもたぶん「一度やってみたかったから」が正解じゃあないだろうか。
結果として話題にはなったものの、見た目の印象は
先のシークエンスも含め却ってチープさを感じる。
仕掛けそのものは大仰も、中身は至ってシンプルなスパイもの。
それも〔007〕に近いような。主人公が惚れっぽいのもその一端。
オマケに最後は〔カサブランカ〕に収斂しちゃうし。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
『The Beatles』の〔A Day in the Life〕宜しく、逆回転させて
緊張感と不安感を盛り上げるBGMも特徴的。
ちょっと神経にはさわるものの、一度聴いたら耳からなかなか離れない。
大作になるほど中国資本の力を借りないと成立させられない現状のハリウッドに於いて、
なんだかんだで資金をかき集めてしまう『クリストファー・ノーラン』の口八丁手八丁に感服する。
脚本や演出以外でも、金集めも才能の一つとして必要な時代なんだねぇ。