封切り五日目。
席数127の【シアター2】の入りは二割ほど。
どこまでホントのハナシかは知らない。
戦後も間もない頃、
『古今亭志ん生』が泥酔して高座に上がり
大喜利の時に居眠りをしてしまった。
共演者が慌てて起こそうとすると客席から
「ゆっくり寝かしといてやれよ」と声が掛かり、
観客は師匠が眠る姿を嬉しそうに見つづけ、
あとで周囲に「志ん生が高座で眠ってよ・・・・」と
自慢げに語ったと言う。
『ジュディ・ガーランド』は
〔オズの魔法使〕〔イースター・パレード〕
〔スタア誕生〕〔ニュールンベルグ裁判〕と名作に多く出演し
「アカデミー賞」にも複数回ノミネートされてはいるものの
それらの活躍は十~三十代まで。
四十歳の声を聞くとともに表舞台からふっつりと姿を消す。
その裏に何があったのかは本作でも描くところ。
酒と薬物に依存し、ブッキングに何度も穴を空け
ショウビズの世界で最も大事な信用を次第に失墜させたコトの顛末。
もっとも彼女をそうさせてしまったのもやはり芸能の世界。
体重を維持させるためや長時間の撮影に耐えさせるため
十代の頃から薬物を与え続けたことの後遺症。
本作にもちょっとだけ登場する娘の『ライザ・ミネリ』が
「母はハリウッドに殺された」と言ったのは有名なハナシ。
でもそう語った当人も薬物や酒で持ち崩すのだから
何とも皮肉ではある。
閑話休題。
そんな彼女が、捲土重来を期すべく
1968年にロンドンでステージに立ち
圧巻のパフォーマンスを披露し絶賛を浴びる。
しかし、蝕まれた体と精神は
『ジュディ』を再び不安定なものにさせ・・・・。
主役の『レネー・ゼルウィガー』の演技が圧倒的。
カラダを絞り、ほぼ同年代の『ジュディ・ガーランド』が
憑依したかの如く成り切っている。
歌唱シーンも吹き替え無しでこなしたとのことで、
特にロンドンでのファーストステージでのそれが素晴らしい。
カメラをどっしりと据えた長回しに
真正面からひたと向き合い、
観ている側が気圧されるほどのオーラを放つ鮮烈さ。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
そしてラストシーンでの、ステージ上の姿こそが本編の白眉。
ロンドンでもやはり同じ愚行を繰り返した彼女が一瞬輝く時間。
観客との間に通う細やかな情に、自然と熱い思いが溢れてしまう。
それは観ている者の心を浄化する暖かな涙に相違ない。