封切り三日目。
席数244の【CINE7】の入りは八割ほど。
例によって実際の出来事を基にしている一本。
しかも自社の女性職員に対してセクハラをした
FOXニュースのCEO『ロジャー・エイルズ』の死後僅か数年で
作品に仕上げてしまうハリウッドの迅速さにも恐れ入る。
それ以外の主要な登場人物もほとんどが存命と思われ、
訴訟等の問題は起きないのかと、他人事ながらも心配になる。
冒頭、全ての要素が必ずしもノンフィクションではない旨の断りが入る。
しかし実際の映像と俳優が演じる画面を巧みに組み合わせたり、
カメラをほんのちょっとだけ動かしキュメンタリー風に処理したりで、
撮影と編集は、その場面にあたかも観客が居合わせる臨場感を醸す造り。
何処までが実で、どこからが虚なのかを
かなり意図的に曖昧にする処理を施しているよう。
主演の『シャーリーズ・セロン』が製作者にも名前を連ねていることからも、
女性の性的被害に格段の思い入れがあることは十分にうかがえる。
被害を受けた女性達が後顧を憂いつつも次々と立ち上がり、
証言をした熱い思いは観る側にもちゃんと伝わる。
草の根からの動きが世論を大きく動かす経緯は
存分に描かれている。
一方で『O・J・シンプソン』事件の刑事裁判が、いつの間にか
人種差別問題にすり替わったように、
この種の告発が政治がらみにされ
きな臭くなってしまうのは彼の国ではありがちな事象。
話中にも、それらしき発言が二度三度と繰り返されるし。
それを上手くうっちゃって、
セクハラが悪であるシンプルなテーゼに上手く収斂させ
糾弾が成功した経緯をより深く描ければ
サスペンスの面でも満足の行く仕上がりになったと思うのだが。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
権力をかさにきてのセクハラやパワハラは許されることではないし、
過去に隠蔽されていたことが、世情の変化で表に出て、結果
社会全体がより良い方向へ進むのならそれがベスト。
一方で、※※をした人だから、と
功績で相殺されがちな論調がなかなかなくならない問題もこれありで、
本作でも幾場面となく揶揄されている
差別発言で有名な某国の大統領などはその最たるもの。
世の中、そう簡単には変わらないことの悪例。
製作者サイドのリベラルな主張には賛同も、
自分達の業界でも
映画プロデューサーの『ハーヴェイ・ワインスタイン』が同様に告発されているわけで、
そちらの方を先に映画化すべきなんじゃ?と
皮相な思いにとらわれたりもする。