封切り二日目。
席数123の【シアター6】の入りは八割ほど。
故あって閉じ込められている場所から集団で脱出するプロセスを描いた作品を
自分勝手に{エクソダスもの}と呼んでいる。
「集団で」というのが一つのキモで、
これによりワンシュチュエーションものから、
集団の構成員の複数を絡めたプロットに拡散でき
ストーリーがより輻輳化するメリットがある。
代表例は
ちょっと前であれば〔アルゴ〕、これから先であれば
〔ベル・カント〕あたりか(もっとも後者にはほとんど期待してないけど)。
で、2008年11月のムンバイでの同時多発テロについては
全く記憶が無く恥ずかしい限り。
本作で初めてコトの次第を知ったわけで。
ここで描かれているのは「タージマハル・ホテル」での顛末だけど、おそらく
同時に標的にされた「オベロイ・トライデント」でも
似た情景が展開されていたのだろうな、と。
オープニングとエンディングのほのぼのとした描写を除けば
120分の尺の殆どがテロの発生から犯人排除迄の緊迫した事態の連続。
畳みかける様に危機が襲い掛かり、無辜の人々が次々と射殺され
モノの様に置き去られて行く。
なるほどこの凄惨さは「R15+」のレイティング。
そんな中で、客を(中には逃げ込んで来た観光客や市井の人もいるけれど)なんとか逃がそうとする
ホテル従業員の奮闘と客の何人かのエピソードが層化して綴られる。
一見イヤな奴にだったのが実は、とか
その逆で自分勝手な言動で周囲に厄災振りまく人物の登場はお約束。
加えてテロリストの側も、感情の無いアノニマスではなく
きっちりと動機の背景が知れる描写が良く出来ている。
窮地に陥った時に、自身の命は勿論最優先ながら、
それを危険にさらしても守りたいものは何なのか。
たとえそれが血が繋がらない他人だとしても(肉親なら尚更)、
身を投げ出すモチベーションは何処に在るのか。
もし神が存在するなら、そのような人物こそを救うのであって、
個人の信条と異なるだけで人を排除するような人間を救いはしないだろう、
それはたぶん、神の言葉を便利に使うだけの妖の代弁者だから。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。
サスペンスの中にも、テロの非道さに加え、
人間らしさの根源は何に由来するかを突きつける珠玉の群像劇。
他人を援ける為であれば、
幼い頃から守って来た教義ですら捨てる決意をする
狂言回しの『アルジュン(デーヴ・パテール)』の行いこそが
ヒトとしてあるべき姿。