RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

シン・仮面ライダー@チネチッタ川崎 2023年3月18日(土)

封切り二日目。

席数532の【CINE8】の入りは八割ほど。

 

 

仮面ライダー〕は小学生の頃
リアルタイムで見ていた世代。

とは言え、そこは田舎のこと
首都圏のように土曜の19:30~ではなく
日曜の朝10:00~の、しかもかなり日にちが遅れてからの放送。

ため、初回が丁度、小学校の運動会にぶち当たり、
全校生徒の誰もが(除く、病欠者)
第一話の〔怪奇蜘蛛男〕を見ていないとの
殆ど笑い話。

当然、
新聞やテレビ等でも取り上げられた
仮面ライダースナック」にまつわる騒動も
良く記憶している。


なんでこんな
やくたいもないことをつらつらと書き連ねているかと言えば、
本作に対しては述べることが殆ど無いような状態。

正直、『庵野』さん、失速してしまったなぁ、と。

シン・ゴジラ〕〔シン・ウルトラマン〕の系譜上に在るものだと
てっきり思っていたのに。


いや勿論、古いお話に
最新の科学を取り入れ、リブートするとの姿勢は共通。

が、会話を始めとするギャグはダダ滑り、
唐突感もあり、何故入れたのかすら判然とせず。

トンネル内でのバイクでのチェイスシーンは
〔トロン(1982年)〕で観たかのよう。

パイプラインをぴょんぴょんと
蚤のように飛び跳ねる場面に至っては
スパイダーマン〕もかくやで
既視感がありまくり。

目新しさがまるっきり無い。
格闘シーンのカット割りはぎくしゃくでチープだし。


一方で、役者たちの棒読みに近い科白は
捻じれた方向性の原作リスペクトとは評価。

「立花」「滝」等の名前の転用、
サイドミラーの形が古い乗用車の使用、
闘いの場所がダムや荒野等、は
同様の思惑か。


『石森』作品へのオマージュとしては
ロボット刑事K〕を出演させてみたりと
それなりに感じはする。

とは言え、構成そのものがかなり陳腐なので、
さほどの補強にはなっていないのが残念。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


ざくっと纏めてしまうと、
ザ・昭和の残滓を拾い上げ、新たな要素を付加し紡いだものの、
石森章太郎』のダークな世界観の再現には押し潰されてしまった帰結とみる。

正義の履行と併せた、全体を貫くテーマも
どうにも浅薄。


不完全な「良心回路」のせいで
善・悪の狭間で苦悩する〔人造人間キカイダー〕、
「ブラックゴースト」に囚われ(やはり)改造されてしまう
サイボーグ009〕と、『石森』作品には近似の設定が多々。

自分に力を与えや者への反逆や
主人公(たち)の孤独な闘いと葛藤。
それだけをきちんと引き継ぐだけでも
十分に面白い作品になったと思うのだが。

 

松田優 写真展@キヤノンギャラリー銀座 2023年3月4日(土)

 

サブタイトルの「その夜の踊り子」は、
赤堀雅秋』による舞台及び映画〔その夜の侍〕のもじりと思われ。

まぁそうした蘊蓄はどうでも良く、
本展はストリップ劇場の踊り子さんを写したもの。


永井荷風』は「ロック座」に通ったと言うし、
田中小実昌』も〔かぶりつき人生〕との小説がある。

写真家でも『森山大道』が〔にっぽん劇場写真帖〕で
やはりストリップ小屋を被写体としていたが。

とは言え、以前と比べれば、随分と少なくなってしまったと聞いている。


少し照明を落とした館内では、踊り子さんたちの
楽屋での素の様子や、舞台に出る前の張りつめた表情、
そしてスポットライトに照らされた肢体が
艶やかに活写される。

一旦、舞台に建てば、指先や爪先まで
神経の行き届いた踊りを魅せてくれるであろう彼女たちは、
そこから降りても尚美しい。


会期は~3月4日(土)で既に終了も、


@大阪では、この秋に展覧されるもよう。

動物会議 緊急大集合!@ギンザ・グラフィック・ギャラリー 2023年3月4日(土)

若冲』の〔動植綵絵〕は「釈迦」のもとに集う動植物を描いたものだし、
「干支」の云われも、お釈迦様が「動物たち集まれ~」と号令を掛け、
来た順番との俗説もあり。

何れも、人々は古から、何かしらの理由を付け、
動物を集めるのが好きだったとの証左だろう。

 

 

本展でも、主にポスターではあるものの、
多くの動物が集まっており、
その展示のされ方は。
タイトルそのもの、動物達がぐるりと輪になって
会議をしている様にも見える。

とは言え、アーチストの作品だけあって、
その表現は様々。

同じ生き物をモチーフにしていても
差は歴然で目を楽しませてくれる。


もっとも今回の主目的は
エーリッヒ・ケストナー』による〔動物会議〕を
平和を希求することの象徴としたもので、
誠に時宜を得ていると言えるだろう。


会期は~3月25日(土)まで。


Winny@TOHOシネマズ川崎 2023年3月11日(土)

封切り二日目。

席数150の【SCREEN4】の入りは九割ほどと盛況。

 

 

今となっては死人に口なし、
金子勇』が「Winny」を開発した時に
どのような思いであったのかは
しかとは判らない。

が、今回の映画版では
少なくとも悪意は無かった
との前提に立っているよう。

もっとも、そうした旗色を鮮明にしないと
ストーリーは創り辛いのだな、とも思う。


コンテンツを作る側は
違法動画のアップロードと日々闘っている。

承認欲求が満たされ、
オマケに報酬が得られる行為は
一つBANしても、
直ぐに異なるアカウントで復活する鼬ごっこ

それでも、野放しにするわけにはいかず、
サイトをクロールしピックアップ、
弁護士からの要請で処理。

削除対応の速度はサイトによって様々も、
概ね以前よりもスピード感は上がっているとも。


とは言え、動画サイトそのものを悪としているわけでは勿論なく。

いみじくも本作でも語られているように、
道具は使い方によって善にも悪にも染まる。

あくまでも相対する側の人間性が現れるとの理解。


本作での『金子勇東出昌大)』は
無垢というよりも世間常識がかなり欠落している人間との描写。

実際の当人の人となりは知る由もないが、
周囲にサポートする人間は存在しなかったのかと悲しくもあり。

海外でのそうした天才には
多くが伯楽の存在があり、
上手くサポートしている印象なのだが。

事件を通して知り合った弁護士が、
それに近い存在になるのは何とも皮肉。


主人公の描き方の偏りに加え、
法廷での幾つものシーンにも迫力が感じられぬのも不満。

また、最後まで警察が起訴した理由が明確に提示されぬことも
消化不良の要因。


中途挿入される「愛媛県警の裏金事件」も実際に有ったこと。

警察の暗部と、一方で中には正義の人も存在することの対比の妙はありつつ
Winny」の功罪と併せて語るのはズレている気もする。


官の側は、先進の技術開発を可能な限りサポートすべきであり、
この国にありがちな、率先して枠を嵌めてしまう行為への反意は激しく頷ける。

もっとも、本作では先にも挙げた多くの要素を盛り込んだため、
ややピントがぼやけてしまった印象を受けるのだが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


警察と検察の阿吽の呼吸で
宥めすかし、知識が無さそうなの良いことに
騙すのに近い手法で誘導、罪を膨らませるやり口は
〔99.9〕や〔イチケイのカラス〕等のドラマを生む下地として
日本的なあるあると義憤も感じる。

自分が同じ立場になったら、と
空恐ろしくもあり。


エンドロールを見れば、制作に当たっての
公的機関の協力は当然のように一切無く(笑)。

弁護団の各員や『仙波敏郎』等の個人名に止まるのは
思わず笑ってしまった。

 

 

仲條正義名作展@クリエイションギャラリーG8 2023年3月4日(土)

 

仲條正義』の単なる作品展ではなく、
「名作展」と銘打っているところが凄い。

気を付けて見ないと、読み飛ばしてしまいそうだが。


タイトル通り、多くの作品群は
どこかしらで目にしたことがあるものがほとんど。

とは言え、壁や柱に
小さく描かれている彼の言葉らしきものが
滅法面白い。

「体調がちょっと悪い方が良いものができる」
みたいな(記憶に頼って書いているので、
実際の言い回しはかなり違っているだろうけど)。

あと「若手が規制を壊してくれれば、
その後について行けてラクチン」なども。

この年齢になると、妙に頷け、
一種の金言と受け取ってしまう。


会期は~3月30日(木)まで。


ITOGUCHI@UNPEL GALLERY 2023年3月4日(土)

「武蔵野美術大学日本画学科卒業生グループ展」が
サブタイトル。

 

 

出展されている
『アルト・クサカベ/小俣花名/後藤まどか/蜂須瑚々/村上のどか』の五名は
既にして卒業生なので、所謂「卒展」ではないのだが。

中では『後藤まどか』の画が好きな表現。
とりわけ〔バスルーム〕は古風さと現代的な軽さが同居し
奇妙な生活感も感じさせ出色。

会期は~3月12日(日)まで。


 

光岡幸一展「ぶっちぎりのゼッテー120%」@ガーディアン・ガーデン 2023年3月4日(土)

何とも意味不明のタイトル。

 

展覧会のポスターも
縁だけがあしらわれ、
ほぼほぼ空白の表現。

中に入れば薄暗く、
中央にはスペースを二つに区切る一面の壁。

そこにはポスター宜しく、
人一人が潜り抜けられる穴が穿たれ、
中に入れば動画が流され、
良く判らぬ複数のオブジェも。

天上からは頑丈なロープが吊り下がり、
壁の中央部にはドラムペダルが取り付けられている。


首を傾げていると、
事務室から作者と思しき男性が現れ、
件のロープにぶら下がり「ターザン」のように勢いを付け
壁のペダルに足を蹴り込む。

度毎にどすん、どすんと音がする、
なんとゆ~パフォーマンス!!

終われば身を翻し、
姿を消す。

おそらく室内のモニターで
客が入るのを確認しているのだな。


会期は~3月18日(土)まで。