RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ザ・メニュー@チネチッタ川崎 2022年11月19日(土)

封切り二日目。

席数244の【CINE7】の入りは三割ほど。

 

 

嘗てスペインに在った『エル・ブジ』は
席数五十ほど、営業は4~10月の半年のみの三ツ星レストラン。

シーズンごとにメニューが変わるため、同じ料理は二度と出されず、
客は最初に厨房に案内され、見学をしてから食事をし
食後に厨房で別れの挨拶をするとのしきたり。

その特異な有様は
エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン(2011年)〕との
ドキュメンタリー映画にもなり、自分は興味深くそれを見ている。

営業してない期間
総料理長の『フェラン・アドリア』は料理の研究に勤しみ、
しかし「自分自身の料理を見失った」として2011年には閉店をしている。

この映画を観ながら、彼の店のことを否応なく想起する
(勿論、自分は行ったことが無いけれど)。


孤島に在る、一日に限られた人数だけを迎え入れるレストランでの出来事を描いた
{ワンシチュエーション スリラー}。

今宵、集うのは、
その店のシェフを世に出したと自負する料理評論家、
落ち目の俳優、店のオーナーの部下、同店に何度も訪れている資産家、
そしてシェフの熱狂的信奉者などの十一人。

もっとも、彼及び彼女等の会話からは、
料理そのものよりも、
訪問することすら困難な場所に来られたこと満たされる虚栄心や
スノッブな心根が透けて見えるのだが。


いつも通りの流れで始まったコースは、しかし
中途から怪しげな空気が漂い出し、
突然の転調を迎え。

それでも会食者は、何故か憑かれたように
食事をすることを止めない、
一人の女性客『マーゴ(アニヤ・テイラー=ジョイ)』を除いては。

彼女は本来、この場に居てはいけない人間であり
加えて総シェフの『ジュリアン(レイフ・ファインズ)』が
この日の為に描いたメニューには不要な存在だったのだ。


本作は作る側と食べる側の関係性が
思わぬ方に向いた時の悲劇をかなりカリカチュアライズして描く。

食べる側は「変なモノは出さないだろう」との、
作る側は「きちんと味わって食べてくれるだろう」との、
暗黙の了解の上に成り立っていることが
破綻をした時に起きることを。

が、我々が訪れるレベルの店でも
随分と居丈高な店の側の人間は存在するし、
他方で「金を出しているんだから」とやりたい放題の客もおり。
よく言われる「お客様は神様」を完全にはき違えている人々が。

そして、店の総料理長が燃え尽きに近い状態になった時に
それを信奉する従業員も含め、どのような事態が起こるのかの。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


とは言え、本編中に供される料理の数々は、
どれも実に美味しそう。

聞けば、きちんと監修を付けてメニューを仕立てているようで、
映画の企画として、期間限定で供してはくれないものかしら。

川崎鉄道三題噺@東海道かわさき宿交流館 2022年11月12日(土)

鉄道150周年記念展が
当該館でも開催されている。

新橋~横浜間の中途の停車駅だし、
京急」も通っていることを勘案すれば
当然の成り行き。


内容は「鉄道歴史展示室」で見たものと
重なる部分が多く、
とりわけ「高輪築堤」に関する資料とか。

とは言え、出所を確認すれば
川崎市民ミュージアム」「砂子の里資料館」」からも多々。

なので、「京浜電気鉄道」や「新鶴見操車場」についての資料は
ここ独自のもの。

{浮世絵}(『清親』の作品もあり)と{写真}を巧く組み合わせ、
コンパクトながら手際よく纏まっている。


会期は~11月27日(日)まで。


あちらにいる鬼@109シネマズ川崎 2022年11月12日(土)

封切り三日目。

席数89の【シアター8】の入りは三割ほど。

 

 

居るよなぁ、
特定の女性層を磁石のように引き付けるこの種の男性って。

この磁石はN極・S極のように更に二つの属性に分けられ、
片方はそれに気づかず、却って周囲をやきもきさせるタイプ、
もう片方は自己の魅力を判っていて、都合良く利用するタイプ。

本作の主人公『白木篤郎』が後者の好例。

虚言癖もあり、更に二重三重に不倫を重ねても罪悪感さえ持たず、
相手の自殺未遂にも感情を動かされることは無い。
あまつさえその後始末に妻をよこすくらいに。

加えて、自分の所有物と見做している間は、
著しく独占欲も強くなる。

一個の人間として見た時に、
まさに「クズ」と表現したくなるほど。

しかし、こうした男に限って
抜きんでた才能を持っており、彼の場合は小説の才。


そしてその魔性に魅せられてしまったのが『長内みはる』。
『篤郎』が妻帯者で娘もあることも知りながら
ずぶずぶと道ならぬ恋に溺れて行く。

本編は、そんな二人の馴れ初めから、
『篤郎』が亡くなるまでの約三十年を
時系列に沿って描いたもの。

中途、『みはる』の出家仏門入りにより、
肉体関係は清算されるものの、おそらく精神的な繋がりは、
彼の死まで続いたのだろう。


人は誰でも心の中に鬼が済んでいると言う。

鬼心が表出する・しないは夫々も、
自身では押し殺していて、傍目にはそう見えなくても
鬼をおさえきれない場合がある。

『篤郎』の妻『笙子』のケースがそれにあたるか。

不倫相手との清算を任され、
読みにくい原稿の清書をし、時としてゴーストライターともなる。
夫が何処で何をしているかを知っていながら、
けして離婚しようとはせず、
お釈迦様の掌上の『孫悟空』のように夫をあしらう。

しかし時として、やるせない感情が溢れ出す時があり、
そこはやはり人間らしさの体現なのだろう。


三人の主人公を演じる、『寺島しのぶ』『豊川悦司』『広末涼子』が
何れも出色。

その技量に頼った監督は、意図的に顔のアップの場面を多くし、
感情の動きを微細な変化で見せる。

時としての長回しにも十分に対応できる力量が
三人皆々素晴らしい。


わけても今回は、実際に髪を下ろしてまで取り組んだ『寺島しのぶ』の役作りに
女優としての意気を感じる。

キャタピラー(2010年)〕や〔ヴァイブレータ(2003年)〕にも驚かされたが
違う意味でカラダを張った彼女の凄みを改めて思い知る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


実際の『井上光晴』がどのような人物だったかは知らぬが、
今回演じた『豊川悦司』は同性から見ても随分と魅力的。

身勝手なのに変に憎めず、
女性の心理を読むことにたけている奔放な男を
軽々とモノしてみせる。

もっとも、身近にこんな人物が居たら、
世の男共は気が気ではなかろうが。

チャリティオークション@POLA MUSEUM ANNEX 2022年11月6日(日)

当該館も、何時の頃からか
「チャリティオークション」を定期的に開催するのが
恒例となってきているよう。

今回は「Spring is around the corner」のタイトルのもと、
展示履歴のある二十名の作品が並ぶ。

キャプションには、作者の
作品とタイトルに纏わる思いが綴られる。

まぁ、まだ冬にもなっていないけど
「冬来りなば春遠からじ」との詩もあることだし。


オークション品は当然、高騰が予想され、
手が出そうなのは、一点15万円の抽選販売のドローイングか。

勿論、好みの絵柄があればのハナシだけど。
もっとも、作家さんの熱狂的なファンは
その限りではないだろうが。


会期は~12月4日(日) まで。

東京長浜観音堂 2022年11月6日(日)

 

今シーズンの第三回会期は11月1(火)~30日(水)。

展示されているのは
〔木造 地蔵菩薩立像(鞘仏/胎内仏)〕。

蓮の上に乗った黒檀のような色味の体躯は
涼やかなお姿ながら、顔はややふくよか。

脇には白木の「胎内仏」も並べられ、
後ろに回れば、背なの大部分が
そのために大きく切り抜かれていることも判る。

柔らかなお顔立ちを拝していると、
心が次第に安らいで来る不思議な感覚。


来年二月には、第四会期が予定されているよう。

OPEN SITE 7|公募プログラム【展示部門】@トーキョーアーツアンドスペース本郷 2022年11月6日(日)

【スペースA (1F)】では
『菅実花』の〔鏡の国〕。

 

【スペースB(2F)】では
『米澤柊』の〔名無しの肢体〕

 

【スペースC (3F)】では
『Excitation of Narratives (EoN)』の〔話法の生成-Essay Filmの立地-〕

 

先の二つは~11月27日(日)まで、
後の一つは~11月10日(木)まで開催中。

 

 

勿論、目当ては『菅実花』なのだが、
展示は過去に観た彼女の作品とはかなり内容を異にしている。

ここ暫くはDollを使い、自己の分身を登場させていたのに、
今回は鏡を利用して鑑賞者の分身を出現させようとの試み。

モチーフは近似ながらも、まぁ当然のように
今までの作品の方が好きかも。

小柳景義展@UNPEL GALLERY 2022年11月6日(日)

 

アーチストの名前の前には、
「第10回ArtistGroup-風-大作公募展 あいおいニッセイ同和損保奨励賞受賞作家」と
付されている。

彼の作品は、其処彼処で頻繁に観かける記憶。

巨大な樹木や、巨石の上に
ジオラマの様に小さな人間が立つ。

描かれているのは
何れも歴史上の人物や、その戦闘を再現したもの。

ご丁寧に、写真に人物名を添えての解説が置かれているものの、
描き込みが細かすぎて、面相までは確認できず。

もっとも旗指物や家紋は人物よりも
数倍大きく描かれているので
それを頼りに大まかな検討は付くのだが。

が、笑ってしまうのは、
必ず作者の家族がその中に描き込まれていること。

これはある意味、サインに近い位置付けかも。


会期は~11月20日(日)まで。