RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

決戦は日曜日@109シネマズ川崎 2022年1月10日(月)

封切り四日目。

席数89の【シアター8】の入りは五割ほど。

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世間を変えるのは、若者/馬鹿者/余所者と言われている。

本作の主人公『川上有美(宮沢りえ)』は、
若者ではないにしろ(いや、政治の世界では若いかも。笑)、
残り二つの要素には当てはまりそう。

病に倒れた衆議院議員の父の後を継ぎ選挙に立候補、
その父親の出資で、自身もネイルサロンは経営しているものの、
甘やかされ育てられたためか一般常識には欠け、
政治にも無縁。

そんな彼女が、事前の準備も無く
突然に「三バン(地盤/看板/鞄)」を引き継ぐことになったものだから
事務所の方もてんやわんや。

私設秘書の『谷村(窪田正孝)』は『有美』を当選させるため奮闘するも
これが一筋縄ではとても行かず。

紆余曲折、山あり谷ありの路を辿り、何とか投票日を迎える。
果たして彼女は当選を勝ち取れるのか、が大まかなプロット。


勿論、世間ズレしていない『有美』がまき散らす面白さは半端ではない。
それは最初に現れた時からしてそう。

自分の当落が掛かっているにも関わらず、何か他人事感が漂い、
観ている側も目を白黒としてしまう。


一方で、政治や選挙に纏わる魑魅魍魎もたっぷり描かれる。
先に挙げた「三バン」には、当然ダークな側面が付きまとう。

後援会と称する謎の組織、地方議員との力関係、
地元企業との利権、判然としない政治資金の出所と用途。

最初は意気に燃えて政界に飛び込んだ気概も、
次第にそうした暗黒面に浸食されてしまうのは、
〔オール・ザ・キングスメン(1949年)〕でも描かれた通り。


もっともそうして染まって行くのは、なにも政治家だけに限ったことではなく、
秘書にしても同様。

当初は熱い志を持っていたはずなのに、
何時の間にか議員の当選の為には手段を択ばなくなる。

しかし、たまさかそのことに疑問を持った時に、
人はどのように変わるのか。


とは言え、与党であれば、争点が無く、
投票率が低ければ、際立った失策さえおかさなければ、
組織票のチカラで当選してしまうのだろうが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


〔紙の月(2014年)〕〔湯を沸かすほどの熱い愛(2016年)〕
そして本作と、ここ暫くの『宮沢りえ』主演作品はどれも外れが無い。

よほどの選択眼か、それとも良いブレーンに恵まれているのか。

今後も、この方向性だけは外さずにいて欲しいもの。

 

スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム@TOHOシネマズ川崎 2022年1月9日(日)

封切り三日目。

席数542の【SCREEN5】の入りは八割強と盛況。

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2022年1月9日時点では
IMDb:8.8
Metascore:71
と、一般客も評論家筋も頗る高評価。

正直、眉に唾を付けていたのだが、
鑑賞後の率直な感想は、上記評点に諸手を挙げて賛同。

過去作の中でも
スパイダーマン2(2004年)〕に並ぶ出来と言っても過言ではナシ。


前作での『ミステリオ(ジェイク・ジレンホール)』の最後っ屁、
スパイダーマン』の正体が『ピーター・パーカー(トム・ホランド)』と満天下に晒されたことで
世間は騒然。

『ミステリオ』のプロパガンダが奏功し、
世情は『スパイダーマン』=善/悪に分断され
『ピーター』の暮らしは周囲を含めかまびすしい。

この辺り、『トランプ』後の実際の米国を見るようで、
何とも複雑な気持ちに。

思い込みや偏見に満ちた報道、或いは意図的な情報操作が
世間をすら変える原動力になるのは痛々しい。


そんな状況を打開するため、
ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)』に
人々の記憶から自身を消して貰うことを依頼するも、
その呪文の失敗が思わぬ結果を呼ぶ。

過去に葬ったハズのクリチャーが何故か大挙現れ敵対。
彼を窮地に追い込む。

この一連の理屈付けが本編全体の鍵となる。
関係性の練り込みがなかなかに良く出来ている。

代々と『スパイダーマン』の主役が変わることへのアンサーにもなっており、
思わずニンマリともする。


一対五の戦いは衆寡敵せず、事態を打開するために窮するも
思わぬ援軍が登場。

かなりの剛腕を駆使しながら展開される後半戦は、
目まぐるしいアクションシーンはややせわしないものの
ドラマ部分の仕上がりが上々。

もっともその過半は、目頭が熱くなってしまう内容なのだが。


タイトルにある「ノー・ウェイ・ホーム」は
世間の無理解により帰る場所を失ったことの表象と思っていたら、
更に重い内容が鑑賞者には提示され。

複数の等価交換が示され、しかし『ピーター』の決意は揺らぐことはない。
人間としての一段の成長が描かれる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


本作の展開は、製作サイドが共通であることから実現した脚本と思われ。

なので、以下は個人的な備忘録としての整理。

スパイダーマン(2002年)〕
スパイダーマン2(2004年)〕
スパイダーマン3(2007年)〕
主演:トビー・マグワイア(現時点で46歳)
監督:サム・ライミ

アメイジングスパイダーマン(2012年)〕
アメイジングスパイダーマン2(2014年)〕
主演:アンドリュー・ガーフィールド(現時点で36歳)
監督:マーク・ウェブ

スパイダーマン:ホームカミング(2017年)〕
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年)〕
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年)〕
主演:トム・ホランド(現時点で25歳)
監督:ジョン・ワッツ

マーベル・スタジオとのライセンス契約分としては
〔シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年)〕
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年)〕
アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)〕

製作:コロンビア ピクチャーズ/マーベル・エンタープライゼズ
配給:ソニー・ピクチャーズ
は共通。

 

 

植田正治を変奏する@写大ギャラリー 2022年1月8日(土)

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植田正治』と言えば、個人的には
あの砂丘の写真だが、
今回の展覧会は一風変わっている。

それはご子息の『植田亨』氏が全面協力をされていることに拠るだろう。


故人が嘗て撮影に使用した道具類(の写真)が
入り口脇にずらりと並んでいる。

それらを含めての総展示数は
約百点。

作品だけでなく、その周辺にもきちんと触れられるよう
構成されている。


室内に足を踏み入れれば、
プロになる前、幼少期に撮った写真から説き起こす。

ほぼほぼ時系列に並べられ
しかし、戦前の何枚かは何気ないスナップのハズなのに
研ぎ澄ましたような片鱗を既に備えている。

思わず、身体の中を冷たい風が吹き抜けるような趣き。

これらは、個人的には
初見のものが多いかな。

戦後の作品については、もはやお馴染みのもの。


植田正治』の大規模展は、過去
東京都写真美術館」「東京ステーションギャラリー
「キャノンギャラリーS」あたりでも観ているのだが、
今回の展示はそのどれとも異なる、
味わいのあるものだった。


会期は~1月29日(土)まで。

日本の新進作家 vol.18@東京都写真美術館 2022年1月2日(日)

こちらも「無料の日」での鑑賞。

一般の入場料は700円。

ちなみに、今月の21日(金)も
「開館記念日」のために無料、と
告知されている。

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「記憶は地に沁み、風を越え」がタイトルのようにも見えるが
実際にはサブタイトルだろうと勝手に思う。


計5組六名の作品は何れも
自分と他者、或いは
自分と土地のついて思いを募らすもの。


『吉田志穂』の作品は    
「@ガーディアン・ガーデン」や「@資生堂ギャラリー」でも観ており。

何れも、別に撮った写真や映像を
組み合わせて作品化している。

本展では、死んで打ち上げられた鯨を
骨格標本にするために砂に埋めた一角が舞台。

それはやがて掘り起こされ、研究対象や標本になるのだろうか。


『潘逸舟』の作品はトウモロコシ畑の映像と
そこで採収した音声が流れる。

ざわざわざわ、と
風に揺れ、擦れる音は〔さとうきび畑〕を思い出してしまった。


『小森はるか+瀬尾夏美』のユニットは
災害に題をとる。

被災した場所の写真と人の記録は
痛ましさと共に、人間の強さにも思い至る。


『池田宏』は「アイヌ」の人々のポートレイトをずらりと並べる。

変な意味ではなく、そのカッコを付けずに坦懐に観れば
何の変哲も無く。

意味付けをしているのは民族との矜持なのか、
それとも観る側の先入観か。


『山元彩香』の写真と映像が、個人的には
本展では一番のお気に入り。

各地でたまたま出会い撮られた少女達の姿は、
透明感に溢れ、しかも静謐。

リアルの肉体を持ちながらも、
そこからは遊離した感覚に思わず目が吸い寄せられてしまう。


会期は~1月23日(日)まで。


松江泰治 マキエタCC@東京都写真美術館 2022年1月2日(日)

一般の入場料は700円も、
年初の2日と3日は無料での入場が可。

以前は無料は2日だけ、
3日は半額だったと記憶しているが
何時の間にか両日無料になったのね。


もう一つ、例年との違いを感じることがあり、
館内の入場者がかなり少なく、
まぁ、これは鑑賞する上では有り難い。

コロナ禍か、それが為の人数の上限規制か、
或いは、【ガーデンプレイス】の各種店舗が
軒並み閉店・閉鎖しているためか。

 

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さはさておき、標題展。

『松江泰治』は作家さんの名前として
「マキエタCC」って何さ?と
疑問に思う。

先ずは、巻頭の言をきちんと読み、
理解することが本展を鑑賞するにはかなり大事。

これがあると無いでは観方が随分と違って来る。


殆どの写真は、同じような技法で撮られている。

画面内にぎっしりと建造物が詰め込まれ、
地平線や空が見えることはない。

端々迄ピントがきっちりと合い鮮明。
まるで精巧な模型を造り、
それを写したかと見紛うほど。


タイトルに、そのものずばり都市名が表記されているケースもあるけれど、
多くは〔PAR〕〔LPB〕などのアルファベット三文字で表されている。
普通に都市コードにも似ているが、さてどうだろうか。

なので、ここはどうかだろうかと考えながら
歩を進めるのもなかなか楽しい。


それにしても各々の都市は
一見違っているようで
通底する何かしらがある。

人々営みが醸すエネルギーが
それを発露しているのかもしれない。


会期は~1月23日(日)まで。


第四弾 日本画解放区@Bunkamura Gallery 2022年1月2日(日)

通常の【Gallery】に加え【Box Gallery】と
カフェ反対側の【Wall Gallery】にまで展示スペースを広げ
計七名の画家の作品が大小並ぶ。

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即売会を兼ねているので
作品の下にはプライス表示。

小品でも十数万~二十万円ほどの値付けなので
とっても手が出ない。

赤丸シールが貼られている数も
現時点では過少。


プロフィールを仔細に確認しながら歩を進めるが、
履歴と重ね合わせれば、
殆どの作家さんの作品を過去に観ているハズも
名前も画風も記憶には残っておらず。

が、今回、改めて観れば
動物を組み合わせ描く『坂本藍子』と
時として判じ画のユーモラスさが漂う『谷津有紀』の作品は
なかなかに面白い。


会期は~1月9日(日)まで。


2021年まとめ

◎行った美術展等の数150(前年+52)

昨年は兎も角、数年前と比較すれば
50以上の減。

それでもコロナ禍の開催に
どこの美術館/ギャラリーも慣れて来た感。

もう一つ実感としてあるのは
会期を長めに設定するケースが多いかな。


◎劇場で観た映画の本数83本(前年-4本)

昨年とは異なり
コロナ禍の影響はなかったものの
鑑賞作を精選していたら、思いの外、本数は伸びず。

・邦画のベスト15本
ヤクザと家族 The Family
すばらしき世界 
ファーストラヴ 
まともじゃないのは君も一緒
騙し絵の牙
BLUE/ブルー
るろうに剣心 最終章 The Beginning
キャラクター
孤狼の血 LEVEL2 
先生、私の隣に座っていただけませんか?
マスカレード・ナイト 
空白
マイ・ダディ
護られなかった者たちへ 
彼女が好きなものは

・洋画のベスト8本
プラットフォーム
ラブ・セカンド・サイト
ファーザー
RUN/ラン
プロミシング・ヤング・ウーマン
ブラック・ウィドウ
MINAMATA-ミナマタ-
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

・邦画のワースト2本 
ホムンクルス
ムーンライト・シャドウ

・洋画のワースト1本
マトリックス レザレクションズ


◎有料放送で観た映画の本数85本(前年-14本)

・面白かった邦画2本
ある船頭の話    2019年
明日の食卓    2021年

・面白かった洋画2本
私は確信する    2021年
薬の神じゃない!    2020年


◎今年読んだ本47冊(前年-12冊)

・面白かった本4冊

歴史の「普通」ってなんですか?     パオロ・マッツァリーノ    ベストセラーズ 
それでも映画は「格差」を描く    町山 智浩        集英社インターナショナル
歴史修正主義            武井 彩佳        中公新書
聖なるズー            濱野 ちひろ        集英社文庫


◎今年読んだコミック24冊(前年±0冊)

・痺れた作品
なし

続きモノの続編ばかり読んでいたなぁ。