RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アンモナイトの目覚め@TOHOシネマズシャンテ  2021年4月17日(土)

封切り九日目。

席数201の【シャンテ-2】の入りは四割ほど。

f:id:jyn1:20210418100823j:plain


「R15+」指定。

あの『シアーシャ・ローナン』も
齢26してついに!!と
わくわくして出かければ
なんのことはない
濡れ場はあるものの、肝心な部分はチラ見えさえせず。

に、引き換え『ケイト・ウィンスレット』は
四十半ばにして全てをさらけ出しているんだから、
ここはもうちょっと頑張って欲しかった。


さはさておき、日本であれば北海道がそうだと聞き及ぶ。
貴重種も含め、アンモナイトの化石の一大産地として
世界にも名をはせる場所。

英国ではライムの海岸がそれにあたるよう。

当地で観光客の土産用に化石を掘り出し
店に並べて糊塗をしのぐ『メアリー・アニング』は実在の人物。

今であれば古生物学者として評価されようも
1800年代前半の女性の地位の低さは
本作の冒頭のシークエンスが示している通り。


彼女のもとをおとなったのは鬱病の静養のために
同地に滞在していた『シャーロット』。

ひょんなことから二人の間に愛情が芽生える。


『メアリー』の境遇も脚色されてはいるようだし
二人の関係性はたぶんフィクション。

LGBTである故の生き辛さのエピソードも
一つ二つと挟み込まれ、
彼女の孤高さの背景を見た思い。


もう一方の『シャーロット』は
夫の愛情への疑いや富裕さが醸す窮屈な暮らしへの逃げ場となった感もあり
自ずとすれ違いが生まれるのは想定に難くないこと。


が、互いの想いが交錯する
最後のシークエンスはなかなかの見せ場。

物語の鍵となるものを挟んで対峙する二人の
心の奥を慮り、胸が締め付けられる気持ちになる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


直近公開の〔燃ゆる女の肖像〕とは
類似の時代背景やシークエンス、筋立て。

しかし、個人的には先の作品により共感するのは、
単純に前に観てしまったからとの理由だけではなさそう。

おそらく主人公二人が秘める思いの強さのバランスが
一番の要素かと。

 

BLUE/ブルー@109シネマズ川崎  2021年4月11日(日)

封切り三日目。

席数89の【シアター9】の入りは三割ほど。

f:id:jyn1:20210413081954j:plain

 

ボクシングの魔性に魅入られてしまった漢達の群像劇。

一つプロボクサーや練習生にとどまらず、
ジムの経営者やトレーナー等を含めてのこと。

それが持つ蠱惑さは、ラストシーンに如実に現れる。


題名の「ブルー」は「青コーナー」の意で
タイトル戦であれば挑戦者が、それ以外であれば格下の選手が
何れも入場するコーナー。

一度プロとなったからには、皆が皆、
赤コーナーに座ることを目指すし、
何時かは我がジムからチャンピオンをと、
スタッフ達も夢を抱き、日々の活動に邁進する。


負けが続き一度は引退をしたものの、
数少ない勝利の味が忘れられず舞い戻ってきた『瓜田(松山ケンイチ)』は、
それでも勝ち星を上げることができず、逆に
対戦相手の分析やトレーナーとしての才能を発揮する。

それでも彼は選手としての自分にこだわり続ける。


『瓜田』の後輩である『小川(東出昌大)』は
日本チャンピオンへの挑戦を目前に、
パンチドランカーの症状に苦しめられる。

これ以上続ければ重篤な疾患につながる可能性もあるのに
上を目指す闘争心は消えることがない。

体を壊すことすら代償にする強い意志とあくなき渇望。


「大牧ジム」の新人である『楢崎(柄本時生)』の
入所動機は職場の同僚にモテたいとの不純なもの。

しかし『瓜田』に教わるにつれ、ボクシングの面白さに目覚め
次第に上を目指して行く。


三様の戦う背景と、リング上での闘いが丁寧に描かれる。

実在のプロボクサーも起用しての拳闘シーンは、
なので迫力の面でも十分。

先の三人も縦横に動き回り、興が削がれる隙も無い。


その間に、『小川』と付き合っている『千佳(木村文乃)』を媒介に
『瓜田』との三者の関係性が差し込まれる。

互いの仄かな思いが交錯し、
殺伐とした闘技の中に、心がほっと和らぐような優しいシーンが
見事な緩急を生む。

が、底辺を流れるのは才能を持つ者への嫉妬、
勝てないことへの焦燥と勝者への怨嗟。

それらが嫌味にならない形で描写される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ボクシングを扱った映画で、駄作は無しと断じてしまう。

洋画であれば〔ロッキー(1976年)〕をはじめとし
レイジングブル(1980年)〕〔ミリオンダラーベイビー(2004年)〕を、
邦画であれば〔ああ荒野(2017年)〕〔百円の恋(2014年)〕をと、
たちどころにほいほい挙げることが可能。

裸の体と特殊な体技を晒すわけだから
肉体改造やトレーニングの数々も必須で、
役者としての矜持も求められる。

もっとも『デ・ニーロ』は違う改造もしちゃったわけだけど(笑)。

パーム・スプリングス@109シネマズ川崎 2021年4月10日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】は九割方の入りで
大層な賑わい。

f:id:jyn1:20210412080052j:plain


よくある{ループもの}なら、繰り返される時間から
何らかの方法で脱出することが目標のはずも
本作のように安住するとの選択肢は極めて斬新。

一方の主人公である『ナイルズ(アンディ・サムバーグ)』は
散々ループから外れることを試したのだろうけれど、
結局は不可能と達観し、
今は繰り返される日々に身を置き、享楽的な暮らしに委ねている。


そこに新たに嵌ってしまった『サラ(クリスティン・ミリオティ)』は一味違う。

ひょんなことから巻き込まれた環境に、最初は『ナイルズ』同様の路を歩むも
あることを契機に異なる選択を。

こうなると、時間が無限に存在する環境は強い。

All You Need Is Kill〕なら身体的スキルを極限まで強化も、
彼女は理論を高めることに邁進する。


ループのきっかけについても極めてユニークな設定。

死んでしまうことは勿論、意識を失う、
或いは寝落ちするだけでも繰り返しが起きてしまう。

なので〔博士が愛した数式〕同様、短いタームで
同じ一日が無限に再生される。


もっとも、一日でできることは
限られているようで実は無数。

移動の自由もあるのだから
日々異なる楽しみを見いだせてしまうのは
脱出を強く望まぬ装置とし存分に機能。

新鮮な設定をした脚本の『アンディ・シアラ』の面目躍如。


しかし根底にあるのは、ラブロマンス×コメディの
実は王道。

イムループは仕掛けの一つで、
主人公の二人が過去の自身を省み、
新たな選択をすることがこの物語の白眉。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


同じ一日を100万回繰り返せば
2,740年を生きたのと同じ計算に。

一人では飽きてくるかもだけど、
それが二人ならまた違う体験ができてしまうだろう。

所謂、共犯的な関係も、
互いに魅力を見出してしまえば、
その場から出ようと抗うのはやはりむつかしいよね、
ましてや凡人であるほど。

 

 

 

砕け散るところを見せてあげる@109シネマズ川崎 2021年4月10日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】はほぼほぼ満員の盛況。

f:id:jyn1:20210411102720j:plain


原作ありものも、当然のように未読。

なので、どこまでが原本で、
どこからが映画用の脚色かは解らないけれど
UFOを実体化させた映像は、取って付けたようで気になる。

監督の『SABU』らしい外連味のある表現も、
流れを阻害してしまう不要なシーンかと。


オハナシそのものはロマンスとサスペンスが融合した
ユニークな立ち位置。

前半、苛めに遭っている少女を上級生が救うとの件は、
共感を持って見つめる。
先の流れも読めず、なかなかに良いエピソードの積み重ね。

苛めを受けていることを見過ごせず、それを助ける決意をするまでが
極めて秀逸。

連綿と繋がる正義感が小気味良く体現される。


後半は転調。
一変し緊張感が漂うダークな展開に。

ただ、なまじ予告編を見ていると
先読みができてしまい、興がそがれる恨みはあり。

が、窮地を抜け出せるかのシークエンスは想定外の展開で、
おお!そう来たか!!と感嘆する落とし方。

愛情の変換が垣間見え、強烈ではあるも
こなれた描写。


また、唐突感のある冒頭部も、
観終われば落としどころとして十二分に納得感のあるもの。

人間は見たままを信じるとの、
レッドヘリング的な手法ではあるけれど、
騙されたことにも苦笑いで反応できてしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


一方の主役である『玻璃』を演じた『石井杏奈』は
直近の〔ホムンクルス〕でもJKの役柄だったかと。

演技的には今だしで、本作は「EXILE」、
前作は同様に「avex」からみのキャスティングと思われるも、
上手くすれば化ける可能性を感じさせる。

類似の暗いテイストが溢れ返る
クリーピー 偽りの隣人(2016年)〕での『川口春奈』を彷彿とさせると書くと
褒め過ぎかな。

そう言えば、彼女もこの頃は二十一歳だったか。

TOKAS-Emerging 2021@トーキョーアーツアンドスペース本郷 2021年4月4日(日)

f:id:jyn1:20210407073313j:plain


会期は二つに分かれ
第1期は~5月5日(水)まで、
第2期は5月15日(土)~6月13日(日)で
各三名の作品が展示される。

 中でも【3階】の『都賀めぐみ』による〔大きな蛇の樹の下で〕が面白い。

特に変哲もない部屋を写した一枚の大判のポスター。
中ほどのノートブックの画面にはQRコードが映っているいる。
それをスマホで読み取るとタイトルにもある「夢小説」が
読めるとの仕掛け。

「あなたは※※人目のお客様です」と表示され、
まだこれだけの人数しか閲覧してないのかなどと思いつつ
書かれているのは〔テニプリ〕の二次創作で・・・・。

本日が会期二日目なのを鑑みると
なんとも複雑な気分にもなる。

ちなみにこれを書いている同日夜中に再度確認すると、
まだ十人ちょっとしか「読者」は増えてないのね。

Welcome, Stranger, to this Place@東京藝術大学美術館 陳列館 2021年4月4日(日)

f:id:jyn1:20210406080338j:plain


入場には事前予約が必要。

 受付で予約画面を提示し
検温~手指の消毒~入場と進む。

キュレーション授業の成果発表とのことで
【1階】【2階】には夫々五名の作品が並ぶ。


しかし『スプツニ子!』の映像作品は
階段脇の小さめのモニターでの上映なので
気を付けていないと分かりにくかったりもする。


『門馬美喜』の四作を観ていると、
うち二枚は見慣れた風景と認識。

タイトルを確認すれば
横浜火力発電所〕〔品川火力発電所〕とあり
なるほどと思う。

普段は意識することもないけれど、
こうしてタイトルを付されると改めて対象と向き合うことになり、
ましてや作者が福島県相馬市出身と知れば
見え方も変わってこようというもの。


会期は~4月7日(水)まで。

 

ホムンクルス@109シネマズ川崎  2021年4月3日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】の入りは七割ほど。

f:id:jyn1:20210405073516j:plain


随分と強気な価格設定。

シニア割りや高校生割りも適用しない
1,900円の均一料金。

なので急ぎムビチケを1,500円で購入、
本編に向かう。

入場時にはノベルティの配布はありも、
果たして作品自体に、それだけの価値はあったかどうか。


白毫のやや上辺りか。
或いは、気づきや透視に関連するとされる
第六のチャクラの付近と言えばよいか。
手塚治虫』による〔三つ目がとおる〕の第三の目の場所もそうだが、
当該所の頭骨に穴を開けることで
一定確率で特殊な能力が備わるとのトレパネーション

古代インカ帝国の頭部穿孔や
分娩時の産道を通るための工夫の一つ
児頭の広形機能(骨重積)も挙げられたりはするけれど、正直
笑って済ます程度の意味づけ。


それが『名越(綾野剛)』の場合、
左目だけで見ることで、相手の人物がそのトラウマを表出した
モンスターに見えてしまうとの前煽り。

どんな凄い造形なのだろうと
わくわくどきどきしてその瞬間を待てば、
眼前に現れたそれはほぼほぼ失笑モノ。

いや確かにね、実際にあんなんが見えたら慄くだろうけど、
今の立場はあくまでも傍観者。
それをも驚かせる外見にして欲しかった。

なので、あまりにチープなクリーチャーに
開いた口が塞がらず。

唖然とした状態で、その後の趨勢を見守る。


ましてや一番の問題は、
見るためには右目を塞がねばならない、との設定。

これが多くの{見えてしまうモノ}とは決定的に異なる構造で、
要は見たくなければ塞がねば良いわけで。
それとも「怖いモノ見たさ」の好奇心か。

なので主人公が率先して見たくなるために、
所謂{巻き込まれ型}の仕掛けを取り入れるのだが、
これが「ヤクザ」と「JK」に関するエピソード。

この二つがどうにも背景に厚みが無く、
特に前者の段では、観ているこちらの方が
情けなくて泣きそうになるほどの筋立て。

『名越』は何時からカウンセラーになっちゃったんですか?


その後の、主人公自身に纏わる流れも、
無理矢理にこじつけたような脚本で
どうにも納まりが悪い。

相対する女『岸井ゆきの』との関係性も、
失われた記憶の回復や愛情の喪失が共に入れ子構造になってはいるものの、
各人の行動はおろかケリのつけ方まで全く釈然とせず
ただひたすらに不可解。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


エンドロール後には特典映像が付くので
焦って席を立たぬが吉。

しかし、そこに書かれた原作者からの献辞は
果たして真からの言葉ですか?と
猜疑的に見えてしまう。