RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

本田亮 SDGsユーモアイラスト原画展@伊藤忠青山アートスクエア 2020年11月8日(日)

元々の会期から「好評に付き延長」との告知で
~12月13日(日)まで。

最初は随分と短い10月1日(木)~16日(金)の予定だったけど
その間に何があったんだろうね。

こんあ短期じゃとってもムリと諦めていたものの
勿怪の幸い、ちょっと足を延ばしてみる。

 

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「SDGs」と最近特に賑やかだけど、実際は2015年に採択された目標で
自分が知ったのは一年くらい後のこと。

カードゲームも経験し、周囲にも話したものの、
皆々あまりピンと来てなかった様子。

それがここに来ての盛り上がりは
いったい何があったのだろうと訝りもする。


標題展は
「楽しく知る世界を救う17の目標」との副題付き。

更にブレイクダウンされた169のターゲットを題に取り
ウイットに富んだイラストで紹介する。

中には首を傾げる表現もあるけれど、
おしなべれば判り易く楽しい。

走るレストラン~食堂車の物語~@鉄道歴史展示室 2020年11月7日(土)

恥ずかしながら、新幹線を含め
食堂車の利用経験が一度も無く。

勿論、電車内で食事をできないほど繊細ではないので
(大学時代に一人、電車の中での飲食ができない
友人が実際に居たが・・・・)、
駅弁等を購入して乗り、食すことはよくあるので。

東海道新幹線なら、最低でも新横浜を超えてから
包みを開こうか、とかね。

で、標題展、嘗て足を踏み入れたことのない場所についての展示なので
もう興味深々。

 

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内容的には当該館でお得意の
黎明の過去から説き起こし、最新の状態までをも網羅。

メニューやカトラリーも並べられ、
へぇ当時はこんな値段だったのね、
こんな食器が使われてたのね、と
マニアでなくとも興味を魅かれること請け合いで。


逆に今は多くの電車から食堂車は姿を消してしまい、
特別仕立ての車両に僅かに残るばかり。

そんなリッチな旅を自分がするのは想像できないものの、
出されている食事くらいは一度は食べてみたいもの。


会期は~2021年2月7日(日)まで。

永井一正の絵と言葉の世界@ギンザ・グラフィック・ギャラリー 2020年11月7日(土)

「いきることば つむぐいのち」とのサブタイトルが冠されている。

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一階は薄暗い空間に多くのイラストポスター。

何れもモノクロームのドローイングで
モチーフは動物。

時としてヒトも描かれてはいるものの、
自然と一体化している。

頗るプリミティブな表現で眼前にぐっと迫って来る。

それに併せてタイトル通り箴言に近いようなフレーズが添えられる。
なんか深いぞ。


地階は過去のワークスが壁面に投影されている。
ゆったりとスクロースするそれを注視していると、
過去観たことがあるものも散見。

そしてここにも、言葉が溢れている。
とても全てを読むことはできないけれど
幾つかを拾ってみれば、感想はやはり先と同様で。


会期は~11月21日(土)まで。

第14回 shiseido art egg@資生堂ギャラリー 2020年11月7日(土)

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第二弾は『橋本晶子』。
会期は~11月22日(日)まで。

例によって事前予約。

【中央通り】側の入り口から入り、手指の消毒、検温
来意を告げ地階に降り、QRコードを提示。


館内はかなり薄暗い空間。
大小の白い紙に、たぶん鉛筆で描かれたドローイングが並ぶ。

で、これがかなりのリアルさ。
微細な描き込み以上に、質感が素晴らしい。


特に正面の壁に大きく掲げられたカーテンのそれは
本物と見紛うばかり。

その背後に透けて見えるのは、窓からの景色ではなく、
壁に掛かっている画だと言うのも洒落ている。

一種の入れ子構造になっており、よくよく見ると
幾つかの作品が類似の表現になっている。


ギャラリースペース自体が、
作者が創造した空間に変容した様な特異な雰囲気。

それでも好きだなぁ、こういった仕掛けは。

日比野克彦を保存する@東京藝術大学美術館 陳列館1階 2020年11月8日(日)

13:30に着くと入り口前にこんな貼紙が。

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念のため係員さんに「事前に告知されてました?」と確認すれば
「はい!」との返答も、
Web上での案内はこうなっていたはず。

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変更になったのなら、その旨をきちんと表記すべきだろう
幾ら無料とは言え。

まあ言い争ってもしょうがないので、三十分時間をつぶし、
14:05に舞い戻ると丁度御大が講演を終えられ
出て来るタイミング。

それにしても丁寧な方だねぇ。入場待ちに並んでいる我々にも
一人一人目を合わせ、会釈をして通り過ぎる。

そして自分が観終わって出る時間にもまだ
知己と談笑され、人が前を通ろうとすると
さっと道を空けるとゆ~。


で、標題展。『日比野克彦』のアトリエっぽいものが再現されていたり、
携行物が並んでいたり、作品も幾つか展示されていたりも、
主眼はどうやらそこにはなさそう。

そういった周辺物も含め、どのように保存していくのかとの問題提起。

なかんずく作品でさえ、美術・博物館から溢れ出し
散逸の危機に瀕するケースを直近の事例も併せて指し示す。

確かにこの手のものは増える一方だから。
デジタル化の方向性はあれども、
缶詰じゃあるまいし空気迄は残せないものね。


もっとも芸術の分野だけでなく、
個人の持ち物もどうするのさ?ってえのは差し迫った課題。

数千冊はある書籍とか、数千冊はあるコミックとか、
膨大な映画のチラシとかパンフレットとかも同様に。

自分が亡くなったらゴミとして捨てられちゃうんだろうか。
中には貴重な品もあるだろうに・・・・。


ハナシを戻すと特に気になったのは氏の年表。

同時代人との知識は有ったけど、
さっくり纏めると、こんな経歴を歩んで来たんだねぇ。

立場が違えば、書かれることも大きく異なる好例ですな。


会期は~11月15日(日)まで。

泉悟朗 トライアスロン報道写真展@キヤノンギャラリー銀座 2020年11月7日(土)

何の気なしにふらりと入ったら、
丁度作者の方が滞廊されており、
展示風景の動画を撮影中。
しかも最後のコメント部分を述べているタイミングで。

邪魔にならぬよう、音を立てずに静かに観て回る。

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サブタイトルは”PASSION/情熱”。

画面からは競技者だけでなく、
応援する人の熱気も伝わってきそうなほど。

飛び散る汗、盛り上がる筋肉、
疲労困憊し今にも倒れそうになりながらも
ゴールを目指す執念がひりひりと伝わって来る。


参加者の中にはパラアスリートもおり、
五体が揃っていても厳しい競技なのに
敢えて挑むその志に、ホントに頭が下がってしまう。


会期は~11月11日(水)まで。

異端の鳥@TOHOシネマズ川崎  2020年11月3日(火)

席数150の【SCREEN4】の入りは六割ほど。
封切り一ヶ月にならんとしているのに
この埋まり具合は凄い。

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以前であれば「エキプ・ド・シネマ​」あたりでしか観られなかった作品が
シネコンで掛かるのも時代だな、と思う。

ましてや三時間尺の大作、よく上映に踏み切ったものだと
違う意味で感心する。

もっともインターミッション無しでこの長尺はかなり辛くて、
観終わって腰を上げたらお尻が痛い痛い。

確か〔赤ひげ〕や〔レッズ〕の時は有ったよな、
木靴の樹〕はどうだったかしら?

でも、間に休憩を入れたら、九十分尺だと二本上映できちゃうもんね。
興行的には無い選択だろうなぁ。


おっと閑話休題


本編は、舞台となる場所も時代も最初は曖昧な描写。

会話ですら、何処の国とも特定できぬ
嘗て耳にしたこともないような発音。

朧げな表現は、
主人公が知見を得る過程を観客にも追体験させるための
全て計算づくの仕掛けのよう。
これにより最後のシークエンスの描写が俄然効いて来る。


随分と辺鄙な田舎に住む叔母の元に預けられている主人公の少年。
よそ者とのこともあり、
地元に住む子供等から強烈な虐めを受けている。

でもその背景には、それ以外の訳もありそうで。
叔母もそのあたりを弁えており、遠くに出歩かぬよう戒めている。

託された理由も直截的に述べられることはないけれど、
少年は両親が迎えに来ることを心待ちに。

そんなある日のこと、突然に叔母が亡くなり、
住んでいた家も失火で焼失、少年の放浪が始まる。

あてどなく両親を探す旅はしかし、幼い身にとって苦難の連続。


本編は幾つかのチャプターに分かれており、
時々で主人公と関りを持つ人物の名前が
各章の冒頭にタイトル宜しく提示。

最初に示唆された如く、少年には常に死の匂いが付き纏い、
行く先々で事件が頻発、ごろごろと死者が出る。

名前を出された人々も、転がり込んで来た
或いは拾い上げた少年を自分の都合の良いように使おうとしたしっぺ返しとして
多くは不幸に陥るのだが
そのほとんどは自業自得。

最初は受け身一方だった主人公が
次第に反逆の牙を剥くようになった帰結としてもあり。

戦時下で生き抜くためにはやむを得ぬこととして捉えはするものの
時として無辜の人を死に追いやるケースでは
シンパシーを持って見守る観客の側にも微妙な感情が湧き起こる。


中途から、彼が排斥される理由がユダヤ人であるからとも明らかになり
独逸軍や共闘するコサック兵、それと戦うソ連軍も登場するに及び
場所はどうやら東欧のどこかで、
時は第二次大戦末期のここと推し測れるように

収容所へ移送される中途のユダヤ人のエピソードが挟み込まれる段になり
全てのピースが出揃い、物語りは団円に向かう。

それを言葉をあまり使わずに、映像の積み重ねだけで表現することに
製作者サイドの手腕の冴えを見る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


そしてラスト。ここでも会話はほぼほぼなく、
カットの積み重ねだけで苦難の背景が説明され
少年もそれを瞬時に理解する。

記憶に残る名シーンと言える。